ウワノキカクのキカクメモ│論理的思考・問題解決のトレーニング

問題解決や論理的思考を探究し続けるブログです。企業でも個人でも、抜本的なビジネス改善から日々のアイデア仕事まで、定めた目的を達成するためのあらゆる営みを「問題解決」と捉えて、理論と実践を一つの体系でシンプルに整理・統合することを目指しています。

「原因に手を打つことが大切だ!」は本当か?①因果関係を一般化して考える

「問題解決」のための「論理的思考」を扱う書籍を見ていると

・問題の「症状」に手を打っても意味がない!
・根本的な問題を見つけてそこに手を打つべきだ!
・とにかく「なぜ」を5回繰り返せ!


など、「原因に手を打つことが大切だ!」といった主張をよく見かけます。


確かに、問題の原因になっている要素を放置してしまうと、一度問題を解消してもしばらくして同じ問題が再発したり、形を変えて別の問題として現れたりしてしまい、結果として何も状況が良くなっていないということが起こりえます。特にビジネスにおいては、様々な問題解決を行ってきたはずなのに、何も業績が良くなっていないということがよくあります。


本当に現実を変えたければ、問題の原因をしっかりと見極めて対処する。それは決して間違っていることではないはず。


しかし、この「原因に手を打つことが大切だ!」という主張は、「いついかなるときでも」当てはまるものでしょうか。

「原因に手を打つことが大切だ!」は本当か? 因果関係を一般化して考える

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問題解決と因果関係の関係性を検討するために、簡略化したモデルで考えてみましょう。

前提条件
□ Aという問題(症状)を解消したい
□ Aの原因はBであり、Bの原因はCであるという因果関係がある 


こうした一般的な条件において、私たちは一体A・B・Cのどこに手を打つべきでしょうか?


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因果関係のどこに手を打つべきか?


「解消したいのがAであるならば、素直にAに手を打てばいい」
「いやいや、この場合Cが根っこの問題なんだから、そこを解消しなければ意味がない!」
「Cが根本的な問題なら、解決はきっと難しいはず。間をとってBをなんとかするのが良いのではないか…」


この条件が一般化されたモデルから普遍的な結論を見出すことはできません。なぜなら、「どこに手を打つべきか?」という問いに答えるには、現実的な様々な事情を十分に考慮して決めなければならないからです。


「何を当たり前のことを!」と言わないでください!この「現実の複雑さを考慮して判断する」という、私たちが決して逃れることのできない当たり前の条件を顧みずに「問題解決」を語ったとしても、世の中は何も良くならないのです。そこを無視してしまうと、「あれはケーススタディの中でしか使い物にならない机上の空論だ」「結局頭のいい人にしかできないことで、自分には無理だ」と断念してしまうことになってしまいます。


現実の複雑さにまっすぐと向き合い、一般化できない世界でどのように問題を解決していくのか。それに答える考え方と方法を見つけていくのがこのブログの狙いです。



現実の問題を考察してみる

ケース①早起きができない

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では、上記のモデルを現実の問題に落とし込んだ例を考えてみましょう。


1つ目は、「早起きができない」という問題についてです。


「早起きができるようになれば…」と考える学生・社会人の方は多いはず。しかし、現実はなかなか早起きすることができず、いつも家を出るギリギリの時間から逆算してなんとかやりくりしている。そんな状態に、例えば次のような因果関係があったとします。

A 問題(症状)
早起きができない
 ↑ その原因として
B 問題
仕事からの帰りが遅く、夜眠るのが遅くなっている
 ↑ その原因として
C 問題
職場が家から遠い


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【例】早起きができない


さて、このとき私たちは問題の因果関係のどこに手を打つべきでしょうか?


「問題の根本的な原因に対処しなければならない」という指針をもって問題解決に当たる場合、この分析の範囲では上司にリモートワークや時差出勤を相談するか、無理であれば転職するしか方法はなさそうです。


しかし、果たしてそれが本当に望んだ未来だったでしょうか?


手に入れたかったのは、早起きして朝の時間を確保して、優雅な時間を過ごしたり、英語やスキルアップのための勉強に時間を使ったり…といったことだったはずです。実際に、自分と同じような職場条件のもとでも頑張って早起きをして時間を有効活用している人はたくさんいる。そうした人と同じようなライフスタイルを手に入れたい。それが望みだったはずです。この例では、問題の根本的な原因にさかのぼって手を打ってしまうと、全く望んでいないあさっての世界に飛んでいってしまいそうです。


一方、「仕事からの帰りが遅く、夜眠るのが遅くなっている」というBの原因に手を打つことは一定の意味がありそうです。遠い職場でも十分な時間が確保できるよう、仕事を定時で切り上げて睡眠を前倒しするための方法を追求していくという方向性です。


ただし、一般的には「早起きができない」というAの問題をダイレクトに扱いたい事例なのかもしれません。「短くても十分な睡眠を取る方法」「ショートスリーパーになる方法」「眠くてもぱっと起きられる方法」など、BやCの前提を維持したままAだけを解消したいと思うのが多くの人の欲求かもしれません(それで本当にできるかどうかは別として)。



ケース②50万円を用意する

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次の事例は「50万円を用意する」です。


自動車で他損事故を起こしてしまったが、なんと保険に加入していなかった…!急に大きなお金を請求されてしまい、どうやって乗り越えるべきかとひやひやする問題です。

A 問題(症状)
今月中になんとしても50万円を用意しなければならない
 ↑ その原因として
B 問題
修理代金の請求書が届いている
 ↑ その原因として
C 問題
先日不注意で他損事故を起こした


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【例】50万円を用意する


この分析の場合、そもそも根本原因は過去のことになってしまい、手を打つことすらできません。


現在生じている問題とその原因の間にタイムラグがあるときには、そもそも原因に手をうつことができない場合もあります。この事例における「問題解決」とは、過去の現実を受け入れた上で今後どうしていくべきかを見つけることであり、そのときに原因分析は全く意味を持ちません。


言うまでもなく、このときに現実的に考えるべきは、誰に相談すれば50万円を工面できるのか、それは親なのか友人なのか銀行なのか。あるいは、支払い時期を遅らせることは相談できないのか、などです。



因果関係のどこに手を打つべきか?

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具体的な例を見ることで「原因に手を打つことが大切だ」という主張に対してわかったことは、「どうやらいつでもそのやり方がうまくいくわけでなさそうだ」ということです。


「早起き」の事例では、確かにCが根本的な原因なのでそこに手を打てれば早起きはできそうですが、「そこまでせんでも」と感じる人も多そうです。「スキルアップのために早起きしたかったのに、そのために仕事を変えるなんて本末転倒だ!」ということかもしれませんね。「50万円」の事例では、そもそも原因が過去のことになっているため扱うことすらできないという状況でした。


では、どういうときに「原因に手を打つことが大切だ」というメッセージが有効であると言えるのでしょうか?


次の記事では、その考察を扱います。

【次の記事】②因果関係の分析が「ユルく」なってはいないか?

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「因果関係の思考」を学ぶには? 推薦図書一覧
この一連の記事では、「原因と結果の論理」を扱っています。


この考え方は、『ザ・ゴール』の著者でありTOC(制約理論)の生みの親であるE・ゴールドラット博士により「思考プロセス」という名称で体系化されました。


日本ではまだ体系的に学べる書籍は少なく、関連書籍が数冊が出ている程度ですので、おすすめなものを以下にてご紹介します。

「因果関係の思考って、そもそもなあに?」
『ザ・ゴール2』エリヤフ・ゴールドラット 著
『ザ・ゴール2 コミック版』エリヤフ・ゴールドラット 著 岸良裕司 監修


「具体的な使い方を基礎から学びたい!」
『考える力をつける3つの道具』岸良裕司 著
『世界で800万人が実践! 考える力の育て方――ものごとを論理的にとらえ、目標達成できる子になる』飛田基 著


「これはぜひともうちの子どもにも学ばせたい!」
『子どもの考える力をつける 3つの秘密道具 お悩み解決! ! にゃんと探偵団』岸良裕司 著


「因果関係の思考のプロ」として理論と実践方法を突き詰める
『頭のいい人の思考プロセス―すぐに使える、図と論理の問題解決スキル』リサ・J. シェインコフ 著
『ゴールドラット博士の論理思考プロセス―TOCで最強の会社を創り出せ!』H.ウイリアム デトマー 著