ウワノキカクのキカクメモ│問題解決のための論理・ロジカルシンキング

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「原因に手を打つことが大切だ!」は本当か?③ある出来事は、複数の条件の掛け算で起きている【完】

「『原因に手を打つことが大切だ!』は本当か?」というシリーズでは「原因と結果の論理」の背景にある考え方と実践方法について書いて来ました。

blog.uwanokikaku.xyz
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特にビジネスマンや起業家の皆さんであれば、「『症状』に手を打っても意味はない。本当の『原因』に手を打つことが大事なんだ!」というのは既に聞き飽きた表現のはず。


しかし、「その言葉どおりに『原因』に手を打ってうまいことやれている人って、どれくらいいるだろうか?」というのが一連の問いでございます。


第一回の考察では、因果関係の分析が「なんかうまくいかないよなー」となる事例を指摘しました。


一方、第二回の考察では、「ここのところが間違っていると、分析も解決策も間違っちゃうよね」という、とても大切なポイントを明らかにしてきました。


その内容を一言で言うと、「原因は1つじゃない!」ということ。ある現象が現実に起こったときに、その原因を直線的に1つだけピックアップしても、分析としては間違ってしまう。


むしろ、「ある出来事は、複数の条件の掛け算で起きている」という前提で物事を捉えることがとても大切だ、というお話でございました。


では、「言ってることはわかったけれど、もう少し具体的なケースで教えて!」という方のために、今回のエントリーでは、第一回で扱った2つの事例について、再度分析をし直して考え方を比較するということをやっていきます。

ある出来事は、複数の条件の掛け算で起きている

ケース①早起きができない

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最初のエントリーでは、以下のような単線的な分析をしました。

A 問題(症状)
早起きができない
 ↑ その原因として
B 問題
仕事からの帰りが遅く、夜眠るのが遅くなっている
 ↑ その原因として
C 問題
職場が家から遠い

 
 
これに基づいてCという原因に手を打とうとすると、引っ越すか転職するかしかなくなってしまい、「そこまでせんでも」という気持ちになってしまう。


では、このケースはどう因果関係を分析するとよさそうか。まず、早起きができない原因を、次のように分析してみました。

A(結果)早起きができない
B(原因)夜眠るのが遅い
C(原因)疲れ切って帰ってくる

 
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毎日の就寝時間は、いつも24時頃。
決して家でダラダラしているわけではない。
疲れ切って帰ってきて、そのままシャワーだけ浴びて、死んだように眠る。


そんな生活が見て取れる分析です。


「じゃあ、このBとかCとかを更に掛け算で原因を分析したらいいんでしょ?」と次に進みたくなりますが、ちょっとお待ち下さい。


「この分析は『いついかなるときも』正しい分析でしょうか?」
「この原因があるときは、『いつも』同じ結果が得られるでしょうか?」


こうやって、自分の分析の客観性・妥当性を突き詰めることが大切だというのが、第二回の学びでした。


あるいは「3つ目の原因があるとしたら何だろう?」と考えるのも有効なやり方です。自分の発想をより冷静に見られるようになります。

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このように、空白の原因をイメージしてみるとよろしいのではないでしょうか。


その上で、具体的な考え方としては…

もし、「夜眠るのが遅い」し「疲れ切って帰ってくる」のに、早起きが”できて”いる人がいるとしたら、どんな人だろうか…
自分よりも忙しく大変な暮らしをしているのに早起きなのは、一流の経営者や芸能人のような人たち?
もしそういう人と自分に違いがあるとしたら何だろう。
なんでそういう人は、大変なのに早起きができるんだろうか…?

そう考えた結果、「一流の経営者や芸能人は早起きをする目的が明確だから」という理由を思いついたとします。


ならば、裏を返せば自分は「早起きの目的が曖昧」だから起きられないのかもしれない。


ロジックで整理すると次のようになります。

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A(結果)早起きができない
B(原因)夜眠るのが遅い
C(原因)疲れ切って帰ってくる
D(原因)早起きの目的が曖昧

 
 
「なるほど、確かにこれは言えるかもしれない」「環境のせいにしていたけれど、結局は自分の問題だったのかも」など、新たな気付きが得られたら、いい分析になったという証です。



続いて、この分析をもとに解決策を考えます。


もし、「夜眠るのが遅い」「疲れ切って帰ってくる」といった既にわかっていた問題が解決可能なものであれば、そちらの方向で検討を進めても、もちろんOKです。


しかし、この分析の場合、上記の2つの理由は「そんなことはわかっていた」「その上でどうしたらいいかが知りたかった」という話かもしれません。


そうであるならば、新しく見つけた「早起きの目的が曖昧」に手を打つのがよいかもしれませんね。

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そもそも、何のために早起きをしようとしているのか。英語の学習なのか、専門性の向上なのか。現状の生活を考慮した上で、本当に必要なものなのか。早起き以外のやり方は無いのか…。


いろいろなことをしっかりと考えていくと、「やっぱり頑張ってやらないと」と奮い立つかもしれませんし、「いまはやっぱりいいかな」と辞める結論になるかもしれません。いずれも、「早起きができない」という問題は解決しているはずです。


原因に手を打ったことによって、しっかりと問題解決になりました
 
 
 
 

ケース②50万円を用意する

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最初のエントリーで扱った2つ目の問題は、こんな内容でした。

A 問題(症状)
今月中になんとしても50万円を用意しなければならない
 ↑ その原因として
B 問題
修理代金の請求書が届いている
 ↑ その原因として
C 問題
先日不注意で他損事故を起こした

  
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現実的に起こってしまった問題に対して、因果関係の分析は何か示唆を与えてくれるのでしょうか?


まず、因果関係の分析が単線的になっていること、1つの原因から1つの結果が生まれているという内容になっていることを、今一度考え直していきます。


つまり「修理代金の請求書」が来たときに「今月中に50万円が必要」という結果が生まれるのは、他にどんな原因があるからでしょうか?

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上記のように、空欄の原因を頭に思い浮かべながら考えていくと…

結局のところ、困っているのは「いまない50万円をなんとか今月中に用意しければならない」ということ。
手元にたくさんお金があれば、50万円の請求が来たってへっちゃらなんだけど…
そんなにお金、ないからなあ…

 
 
つまり、「貯金が足りない」ということが、現実としてある。貯金がたくさんあれば、「50万円が必要」となったって、支払うべきお金として出すだけなのだけれど、それが無いのが困りごとだ、と。

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なるほど。


その上で素直に思うのは「保険に入っていなかったの?」ということかもしれません。このケースの場合、事実として「保険には入らなかった」という状態だと考えましょう。


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A(結果)今月中に50万円が必要
B(原因)修理代金の請求書が来ている
 C(Bの原因)他損事故を起こした
D(原因)貯金が足りない
E(原因)保険に入らなかった

 
 
さて、ここからです。


「期日である今月末までになんとしても50万円を用意する」という行動が必要なことは、これらの原因に手を打っても変えることはできません。「わかっていることを、あとはやるだけ」というとき、因果関係の分析にできることは限られています


それぞれの原因について、「現在の変えられること」と「過去の変えられないこと」を明確に分けてみてみると…

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C(Bの原因)他損事故を起こした【過去】
D(原因)貯金が足りない【現在】
E(原因)保険に入らなかった【過去】

 
 
「変えられない過去」のことを考えても何も前に進みません。分析を見て、いまからできることに行動を集中させることによって、解決へのスピードを早めることができます。


今回のケースでは、「貯金が足りない」という現状をどうするかに集中する以外、やることはないということが明らかになりました。厳しい現実を直視する他ない、ということですねー。



ちなみに、この考察から学ぶことがあるとすれば、以下のような因果関係でしょうか。

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A(結果)とても困ったことになる(かも)
D(原因)貯金が足りない
E(原因)保険に入らなかった
F(原因)事故が起きる(かも)
 G(Fの原因)車を日常的に運転する
 H(Fの原因)人間はミスを犯すものである

 
 
人間に失敗はつきもの。


論理的に考えれば、事故を起こしてしまう可能性を完全に排除することが出来ないのは、あきらかです。


それがわかれば、先に手を打っておかなければ大変なことになるかもしれないなあと、ひしひしと感じられるのではないでしょうか。


事故を起こしてしまう可能性を考慮し、その分の貯金を常にもっておくようにするか、それが難しければ、保険に入るかしか無いということですね(保険のセールスではありませんが笑)。


「因果関係の分析」はどういうときに有効か?

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具体的なケースを見たことでなんとイメージもうまれてきたかと思いますが、「因果関係の分析」は習慣的・システム的な問題の解決を得意としています


また、1回きりの事象に対しては「今後同じ問題が起きないようにするには?」というシステム上の示唆を与えてくれます。


「原因と結果のつながりを見る」ということは、「それらのできごとのつながりの背景にある『システム』『仕組み』を見る」ということ。


システムを分析し、システムにアプローチすることができれば、全ての事象に手を打つよりも遥かに少ない労力で、確実に効果を生み出すことができます。


そうしたレベルで気づきをもって解決すべきときには、このやり方をおいて他にない、最強の武器になりますので、ぜひ以下の書籍で訓練しながら習得されてみてください。


「因果関係の思考」を学ぶには? 推薦図書一覧

この一連の記事では、「原因と結果の論理」を扱っています。


この考え方は、『ザ・ゴール』の著者でありTOC(制約理論)の生みの親であるE・ゴールドラット博士により「思考プロセス」という名称で体系化されました。


日本ではまだ体系的に学べる書籍は少なく、関連書籍が数冊が出ている程度ですので、おすすめなものを以下にてご紹介します。
 
 

「因果関係の思考って、そもそもなあに?」

『ザ・ゴール2』エリヤフ・ゴールドラット 著
『ザ・ゴール2 コミック版』エリヤフ・ゴールドラット 著 岸良裕司 監修

「具体的な使い方を基礎から学びたい!」

『考える力をつける3つの道具』岸良裕司 著
『世界で800万人が実践! 考える力の育て方――ものごとを論理的にとらえ、目標達成できる子になる』飛田基 著

「これはぜひともうちの子どもにも学ばせたい!」

『子どもの考える力をつける 3つの秘密道具 お悩み解決! ! にゃんと探偵団』岸良裕司 著

「因果関係の思考のプロ」として理論と実践方法を突き詰める

『頭のいい人の思考プロセス―すぐに使える、図と論理の問題解決スキル』リサ・J. シェインコフ 著
『ゴールドラット博士の論理思考プロセス―TOCで最強の会社を創り出せ!』H.ウイリアム デトマー 著