ウワノキカクのキカクメモ│問題解決のための論理・ロジカルシンキング

問題解決のためのロジカルシンキングを学ぶためのブログです。

実践者向けロジックツリー解説│目的・メリットと実践上の注意点

論理的思考/ロジカルシンキングを学び始めると、初期に出会うのがこの「ロジックツリー」です。そのシンプルな見た目からして「自分にもできそう!」と思って着手するものの、実際に作ってみると「これでいいのかな…」と難しさを感じ、不安になることもしばしば。
 
 
本やブログでロジックツリーを学んでいると、一般的なケースを題材にしたツリーの作成例を目にします(利益を増やす・減量するなど)。しかし、それもあまりに一般的・抽象的すぎて、日々の実務の中でロジックツリーをどう使うと良いのかはなかなか明らかにされていません
 
 
今回の記事では
 

・ロジックツリーがうまく作れていない(気がする)
・実務の中でどうやって使ったら良いのかいまいちイメージがわかない
・どうやったら筋のいいツリーが作れて実践できるのかわからない

 
といったロジックツリーの実践者の方を対象に
 

◆「そもそもロジックツリーとは何か?」その定義と具体例
◆ロジックツリーを実践する目的・メリット・使用シーン
◆ロジックツリーを使ってもうまくいかないのはどんなときか

 
といった内容をご紹介します。
 
 

 
 
 

ロジックツリーとは?

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ロジックツリーの説明

そもそも「ロジックツリーとは何か?」を説明します。
 

主要課題の原因や解決策を<MECE>の考え方に基づいて、ツリー上に論理的に分解・整理する方法である。”
※MECE(ミーシー)=Mutually Exclusive and Collectively Exhaustiveの頭文字で「もれなく、ダブりなく」という意味
【出典】『新版 問題解決プロフェッショナル「思考と技術」』ダイヤモンド社 斎藤嘉則 著

 
上記の説明は、戦略コンサルタントを志す人であればほぼ全員が読んでいるであろうこの本から引用しています。
 

※改めて読み返すと、非常に本質的なことがわかりやすくまとまっているバイブルだと実感します
 
 
論理的思考には「具体と抽象の論理」「分析と総合の論理」「原因と結果の論理」の3つがありますが、ロジックツリーは中でも「分析と総合の論理」を実践する上で最適な手法です。
※上記「3つの論理」については以下の記事をご参照ください。
 
【図解】論理的思考とは何か│論理の型でロジカルシンキングの実践法を紹介 - ウワノキカクのキカクメモ│問題解決のための論理・ロジカルシンキング
 
 

ロジックツリーの実践事例

具体的な実践事例を見たほうがわかりやすいと思います。このブログで取り扱っている内容を例にとると、以下のようなツリーが作れます。
  
 
▼ロジックツリー例│論理的思考の全体像
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上記の様に整理すると、「論理的思考には3つあります」とすでにお伝えしていますが、さらにその上位の概念として「静的な(Static)論理」「動的な(Dynamic)論理」があることがわかります。また、「分析と総合の論理」の中には「分析」「総合」という具体的な実践方法が含まれていることがわかります。こうして整理することで、「論理的思考」という複雑なテーマであっても、明瞭に全体像を示すことができます
 
次に、「論理的思考を学ぶにはどうすればいいか?」という問いに対する答えを以下のようにまとめてみました。
 
 
▼ロジックツリー例│論理的思考を学ぶ
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学ぶ方法には「知識を得る」「訓練する」「実践する」の3つの段階があり、更にそれぞれの中にはどのような具体的な方法があるのかを整理しました。そして、今まさに読んでいただいているこの記事が、全体像の中でどこの役割を担っているのかを示しました。
 
 
ロジックツリーは複雑・広範な情報をシンプルに整理し、部分と全体をわかりやすく示すことに最大限効果を発揮します。
 
 
 
 

実践者向けロジックツリー解説

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具体例のイメージも湧いたところで、それでもなおロジックツリーがうまく使えない理由を説明します。その理由は、ロジックツリーを使う目的や使うべきシーン、また反対に使うべきではないシーンがよくわかっていないから。「とりあえずロジックツリーだ!」と狙いが曖昧なままに手段に走ってしまうことがうまくいかない一番の原因です。まずは、ロジックツリーにできること、できないことを正しく理解するところからはじめて行きましょう。
 
 

ロジックツリーを使うメリット

ロジックツリーが使えるとできることとして、以下の4点があります。
 

1)部分と全体の関係性をわかりやすく示せる
上記の例のように、ツリーの作者の頭の中に部分と全体の明確な関係性がある場合には、それを示す上でロジックツリーは有効です。
 
「全体はどうなっているのか?」「いまはどこの話をしているのか?」を情報を伝える側と受け取る側で共通認識をつくる上では非常に便利です。50枚や100枚を越えるプレゼンテーションを作る際には、目次と合わせてロジックツリーを活用することも多々あります。
 
 
2)ファシリテーション能力が上がる
部分と全体の関係を明確に示せる様になると、議論のファシリテーション能力が向上します。  
 
議論が平行線で噛み合わないとき、アイデアが出ず行き詰ったときなどは、参加者の頭の中を整理するためにロジックツリーを作成すると、見落とした前提や食い違っていた要素が明確になり、議論の生産性が向上します。
 
  
3)少ない情報で仮説が立てられる
コンサル業界でロジックツリーが必須スキルとなる理由はここにあります。ロジックツリーがかける様になると、自分が詳しく知らないテーマ・領域であってもある程度全体を把握し、仮説を立てることができるようになります。
  
例えば、自分が詳しくない業界のコンサルティングを担当することになった場合、まずはその業界に関する基礎的な情報をニュースや書籍などで一通りインプットします。その後、自分の理解をロジックツリーに落とし込んでみると、理解が曖昧な部分や論理的に整合性が取れない部分、課題がありそうな内容の仮説が見えてきます。 
 
 
4)論理的思考の実践的なトレーニングになる
そして何より、自分の論理的思考のトレーニングになります。具体的な案件を対象にツリーを書くことによって、自分の認識を現実と照らし合わせて検証でき、考え方の何が間違っていのかを具体的に振り返ることができます。「分析と総合の論理」を習得する上で、ロジックツリーは最適なトレーニング方法です。

 
 

実務でロジックツリーを使う目的

実務の中でロジックツリーを使用する目的は以下の3つに集約されます。
 

①自分の頭の中を論理的に整理する【整理ツール】
自分が学んだことや考えたことなど自分の頭の中を整理するために活用します。実務の中では、企画書や報告書類を作成する場合、いきなり内容に入る前に全体像をロジックツリーで構成し、「これで相手に正しく伝わるだろうか?」と整理することができます。
 
②複雑な全体像をみんなで正しく共有する【共有ツール】
「論理的思考とは?」のように複雑な全体像を複数人で正しく理解するために、マップとしてロジックツリーを活用します。全体を明示することで誤解を最小限に抑えることができ、複数人で議論する際の効率を飛躍的に高めることができます。
 
③抜け漏れ・重複がないかを論理的にチェックする【検討ツール】
全体像が論理的に明示されることで、論理に抜け漏れ・重複がないかを検討することができます。チームで大きなプロジェクトを進める際には、それぞれの担当者が自分の責任範囲はしっかりと見ていますが相互の繋がりが見えづらくなります。全体としてロジックツリーに整理しながら「これは誰がやるの?」「同じ内容をかぶって検討していない?」とチェックしていくことで、大きな損失やトラブルを防ぐことができます。

 

ロジックツリー使用上の注意点(よくある失敗)

その上で、ロジックツリーにできないことや代替手段など、実務で使うときの注意点を確認します。
 
1)正しい解決策が論理的に決められない
ロジックツリーでは、問題を細分化して取り組むべき課題を特定することはできますが、正しい解決策を決めることはそもそも論理的にできません。具体的に、以下の分析を見てみましょう。
 
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利益を増やすためにコストを下げること、具体的には販促費を減らすことを考えたとします(「販促費が年々高騰していた」などの理由があるとよくある結論です)。しかし、それをやるとよりコストが下がった以上の売上が下がる可能性があり、本当は筋のいい解決策ではなく、むしろ自滅につながる悪手のおそれすらあります。
 
 
ロジックツリーは問題を細かく分析する中で、因果関係のつながりを切り落とします。そのため、特定の問題を解消することによって何が起きるのか、正しく判断できなくなります。「全体像を整理すること(分析と総合の論理)」と「課題を解決すること(原因と結果の論理)」は全く別です。プロの問題解決の現場でも時々見受けられるミスですので、十分に注意しましょう。
 
 
2)問題の原因(因果関係)は分析できない
ロジックツリーでは、上位の概念から演繹的に分析するため、「生じている問題の特定」はできますが「その問題がなぜ生じているか?」の分析はできません
 
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上記の例に引き続き「販促費が多く、年々増え続けている」という問題があった場合、ロジックツリーでその理由を分析してもその内訳が細かくなるだけで、本当の意味で因果関係を明らかにすることはできません。問題が起きている原因を分析するのは「原因と結果の論理」ですので、そもそも「分析と総合の論理」であるロジックツリーは当てはまりません。

 
よくある質問として「でも、Whyツリーで原因が分析できるって書いてますけど?」と言われますが、そのツリーをよくよく見ていただければ分かる通り、やっていることは事象を細かく分析することではないでしょうか。上記の例で言えば、仮に「リベートが増えている」という結論にたどり着いても「で、それはわかったけど、なぜリベートが増えているの?」という質問には答えられません。「Whyツリーで問題の原因が分析できる」というときに言っている原因は因果関係のことではありませんので、意味合いの理解を注意しましょう。
 
 
3)マトリクスの方が扱いやすい
最後に「ロジックツリーよりマトリクスの方が良い議論ができるときが多いよ!」ということを指摘します。ロジックツリーではテーマを複数の切り口で分析していきますが、「ロジックツリーを使おう!」と思っていると以下のような形になることは少なくありません。
 
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こういう場合には、ロジックツリーではなくマトリクスを使うことをオススメします。
 
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マトリクスが作れると、空白を見ながらそれぞれのマスの中の意味合いを集中して考えることができるので、効率のいい思考や議論ができます。
 
 
また、応用範囲が広く、フレームとしてよく知られたマトリクスも多々あります。
 

有名なマトリクス例
重要性×緊急性のマトリクス
ジョハリの窓(自分が知っているか?×他人が知っているか?) 
プロダクトポートフォリオのマトリクス(市場成長率×相対シェア)

 
ロジックツリーもマトリクスも、いずれも同じ「分析と総合の論理」の具体的実践方法の1つですので、ぜひ合わせてトレーニングしてみてください。 
 
 

おわりに

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ロジックツリーはシンプルで非常に便利なツールである一方、なかなか実務の中で使いこなすのが難しいフレームワークです。
 
 
今回の記事を参考にしながら、以下の記事からもより深く学んでいきましょう。


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