「もっとよく考えろ!」
というのは、仕事をしていて最も苦痛を感じる言葉の一つです。だって、自分としては十分に「よく考えた」と思っているのだから。
周りを見渡せば、同期や世代の近い後輩を見ても、自分ほど周りに迷惑をかけている人はいないように思う。
みんな、自立して仕事を回しているのに、いつも自分だけ「待った」がかかってやり直しになってしまう。
そんな自分だからこそ、いつも人一倍よく考えて、人一倍時間をかけて、丁寧にやっている。それなのに、「もっとよく考えろ」と言われてしまう…。
今回は、そんなお悩みにお答えすべく
◆なぜ自分だけ「もっとよく考えろ」と言われるのか?
◆どう考えれば人に迷惑をかけず、スムーズに仕事ができるのか?
といったところを、論理的思考、問題解決の思考で実際に企業のコミュニケーションや問題解決を行っている経験からお伝えしていきます。
なぜ自分だけ「もっとよく考えろ」と言われるのか?
「考えていない」からではなく「考えるところが間違っている」から
どうして自分だけ、「もっとよく考えろ」(考えているのに!)と言われてしまうのか。
それは「考えるところが間違っている」からです。
「考える」というのは「自分で問いを立て、自分で答えを出す」ということなのですが、この「問い」の立て方に問題があるということです。
今はどう考えているのか?
もう少し具体的に解説していきます。
「もっとよく考えろ」と言われてしまうとき、そもそも自分は何を考えているのかというと
・「自分が考えやすいところ」を考えている
・「自分が思いついたこと」を考えている
・「自分が大事だと思うこと」を考えている
つまり、すべてを自分中心で考えてしまっているわけです。
例えば、会議の議事録をとって提出したとします。そのときに
・「自分が手元にメモした内容だけ」を書く
・「自分の記憶、印象に残ったこと」を書く
・「自分が『こうすべきだ』と思ったこと」を書く
ということをしてしまったらうまくいきませんよね。
この「自分中心の世界観」に無意識のうちに囚われていることに気づくことが、現状を打破するための第一歩です。
本当は何を考えるべきなのか?
では、自分中心ではだめだとして、「本当は何を考えるべきなのか?」を明らかにしないといけませんね。
結論から言えば、本当に考えなければならないのは、例えば以下のようなことです。
・この仕事で絶対に達成しなければならない目的は何か?【目的】
・この仕事で相手にどう考え、どう行動して欲しいのか?【相手の反応】
・相手に伝えるべき結論は何で、その理由や根拠は何か?【メッセージ】
つまり、考えるときの視点を自分中心から、相手あるいは組織やチームのみんなを中心に変える必要があるということです。
後半は、この「目的」「相手の反応」「メッセージ」ということについて深堀りしていきます。
どう考えれば人に迷惑をかけず、スムーズに仕事ができるのか?
仕事は「目的ありき」で動いている
みんなはスムーズにストレスなく仕事をやっているのに、いつも自分ばかりがうまくいかない。
そんな状態を脱するヒントをここから紹介していきます。
まず、「仕事は『目的ありき』で動いている」ということを理解しましょう。
具体例
・会社全体は「事業活動を通じて顧客に価値を提供し、利益を上げること」が目的
・部署は「与えられた役割や専門性の範囲で、定められた成果を出すこと」が目的
・マネジャーは「メンバーにタスクを実行させることで、チームに与えられた役割を安定的に果たすこと」が目的
・メンバーは「与えられたタスクを完了させ、チームが実際に価値を作ることに貢献すること」が目的
組織全体であれ個人であれ、仕事というくくりであれば、全ての行動に目的があります。
したがって、その目的を実現できる行動は「OK」ですし、その目的に到達しない行動は「やり直し(つまり「もっとよく考えろ!」)」になるわけです。
ということは、仕事に取り組む際には
・この仕事の目的は何だろう?
・何ができたらOKを出してもらえるだろうか?
と毎回きちんとわかっていることが必要です。
自分一人で考えてわからなければ、関係する人に教えて貰うのが近道です。
聞く側としては「こんなこと聞いても大丈夫かな…?」と不安になりますが、案外相手はむしろ聞いてきたことに関心して、いろいろと教えてくれるものです(そうでない場合もありますが…)。
「相手の反応」を先回りして考える
目的がわかったら、次は「相手の反応」を考えましょう。
「自分の仕事を受け取った相手にどう考え、どう行動してほしいのか?」を具体的にイメージすればOKです。
具体例
・この資料を読んだ課長に次の企画を承認してほしい
・いま困っているA社の見積もりの件を一緒に考えてほしい
大切なのは「自分の仕事【原因】→相手の反応【結果】」という因果関係を想定することです。
「もっとよく考えろ」と言われていまう人の特徴として、「自分の行動は、自分の思った通りの結果になるはずだ」という思い込みが強いことが挙げられます。
具体例
・私が提案したら相手は「Yes」と言ってくれるに違いない(実際は「No」と言われてしまう)
・私が伝えたことは、相手も理解、共感してくれるはずだ(実際は「よくわからない」と言われてしまう)
「自分の思い込みにはまっていないか?」と立ち止まり、相手の立場に立って考えるクセをつけることがとても大事です。
「メッセージ」をはっきりさせる
最後に「メッセージ」を明確に伝えることを考えましょう。
「メッセージ」とは「結論と根拠のセット」である
と覚えておくといいでしょう。
企画書でも、議事録でも、報告書でも、相手に何かを伝えるときは「結論と根拠のセット」がきちんと揃っているかを意識することが大事です。
この意識が無いと多くの場合
・根拠が曖昧で結論だけ伝えてしまい「なんでこの結論になるんだ?」と言われる
・データや事実で根拠だけを羅列して「で、何がいいたいの?」と言われてしまう
・結論も根拠もなく自分の思いだけを伝えて「わかった、もういい」と言われてしまう
といったことが起きてしまいがちですので、注意しましょう。
「結論と根拠のセット」とは、具体的にいうと…
具体例
・今回は企画Aを採用すべきです【=結論】
なぜなら、
- ターゲットのニーズにぴったりで【=根拠1】
- 自社の強みを十分に伝えられる【=根拠2】
からです。
・A部長は来週の午後の時間を希望しており【=根拠1】、B部長は火曜日と金曜日ならいつでもいいと言っているので【=根拠2】、より早く意思決定できるように【=根拠3】、火曜日の午後に会議を設定しました【=結論】
というような感じです。
言われてみれば当たり前の事かもしれませんが、注意しないと意外とズレが生じてしまうポイントです。
しっかりと意識しましょう。
おわりに
ここまで「論理的思考」という言葉を一切使わずに説明してきましたが、以上のすべては
「論理的思考」を日々の仕事で活用しよう!
という内容でした。
「そういうの、苦手なんだよな…」という方は、以下の記事では徹底的に苦手な人向けに、ゼロからわかるロジカルシンキングを書いていますので、参考にしてみてください。
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