「TOC制約理論を使う」といっても、具体的にどうしたらいいの?
・TOC制約理論を実際に使うための方法
を紹介していきます。
TOC制約理論の実践方法
ボトルネックに集中するための手順
TOC制約理論を実際に自分の組織や自分自身の課題に使うためには、以下の手順に沿って準備を進めることが必要です。
ボトルネックに集中するための手順
- 増やしたいアウトプットを決める
- プロセスを書き出す
- ボトルネックの仮説を立てる
- ボトルネックを徹底活用する方法を決める
- ボトルネックの能力を上げる方法を決める
- 実行し、結果から仮説検証する
3~5のところで「5つの集中ステップ」を使っています。早速、具体的な内容を見ていきましょう。
増やしたいアウトプットを決める
『ザ・ゴール』というタイトル通り、TOC制約理論は
目標(ゴール)を明らかにする
例
Q.「増やしたいアウトプットは何か?」
A.
・経営者:事業から得られる利益
・ブロガー:ブログのアクセス数
・塾長:塾に通う生徒の成績(テストの点数)
内容は何でも構いませんが、必ず以下の2点を押さえることが必要です。
設定するアウトプットの条件
- 測定可能な数字であること
- 定期的な結果確認が行えること
特に重要なのが2点目です。TOC制約理論の実践の本質は、一定のシステムを前提とした繰り返し行われるプロセスの改善活動です。定期的に結果を確認することで
・仮説があたっているのか?
・狙った変化が起きているのか?
をチェックしていきます。
もし一回限りの挑戦(例:大学受験に合格したい)のパフォーマンス向上に取り組みたい場合は、その結果を大きく左右する習慣的なアウトプット(例:定期テストの点数)を設定しましょう。
プロセスを書き出す
次にやることはアウトプットを生み出すプロセス全体を書き出すことです。先に具体例を見てみると
Q.「アウトプットを生み出すプロセスは?」
A.
・経営者:広告→問い合わせ→商談→成約→製造→納品 ⇛ 利益
・ブロガー:リサーチ→企画→記事作成→投稿→拡散 ⇛ アクセス
・塾長:予習→授業→復習→小テスト→テスト対策 ⇛ テストの点数
ボトルネックがどこにあるのか?
決まったやり方はありませんし、扱うシステムの規模や内容によるところが大きいですが、経験的には
プロセス数を5~8の間に収める
とボトルネックが特定しやすい様に思います。プロセス数が4つ以下だと概念が大きすぎて直感的に捉えづらく、9つを超えると複数の候補が残ったときに絞り込みづらくなります。
より詳細な分析は以降のステップで行いますので、ここでは
おおまかに5~8のプロセスに分ける
ボトルネックの仮説を立てる
プロセスが書き出せたなら、いよいよボトルネックの仮説を立てます。
ボトルネックの仮説の立て方
STEP1 各プロセスの現状を確認する
- 現状がわかるデータを集める
- 各プロセスで起きている主要な問題や課題意識を書き出す
STEP2 ボトルネックの仮説を決める
- 各プロセスの能力を数値化し、最も小さいところをボトルネックの仮説とする
※データがない場合は直感的に数字をおいてよい
「直感的に数字をおく」というのは、具体的には以下のようなイメージです。
Q.「各プロセスの能力は?」
A.
・経営者:
広告:15→問い合わせ:20→商談:10→成約:5→製造:20→納品:15 ⇛ 利益
「成約:5」をボトルネックの仮説とする
・ブロガー:
リサーチ:15→企画:10→記事作成:20→投稿:15→拡散:15 ⇛ アクセス
「企画:10」をボトルネックの仮説とする
・塾長:
予習:5→授業:20→復習:10→小テスト:15→テスト対策:15 ⇛ テストの点数
「予習:5」をボトルネックの仮説とする
数字は直感でいいの?
ここが弱い気がするな…
勿論、工場の生産設備のように毎時データがすべてのプロセスで取れるときはそのデータで決めます。しかし、現実的にはそうした直接処理能力を明らかにするデータがないことがほとんどです。
ここで決めるのはあくまでボトルネックの仮説です。十分にデータのないときでも、仮説検証することによって答えに辿り着くことができますので、根拠に基づいて仮説を作り、次に進みましょう。
ボトルネックを徹底活用する方法を決める
ボトルネックの仮説を決めたら、次はボトルネックを徹底活用する方法を決めます。
ボトルネックを徹底活用する方法を決める
Q1.「ボトルネックは本来の力を十分に発揮できているか?それとも、何らかの障害によって能力を十分に発揮できていないか?」
(十分に発揮できている場合)
Q2へ
(十分に発揮できていない場合)
障害を具体的に特定し、それを取り除く方法を決める
例
・経営者:「成約」がボトルネック
障害-忙しすぎて提案準備の時間が十分に取れず、本来取れる可能性がある相手でも成約を逃している場合がある
取り除く方法-提案準備の作業があるときは、新規の問い合わせ対応は事務スタッフに一任する
・ブロガー:「企画」がボトルネック
障害-うまい企画の立て方がわからない
取り除く方法-企画の上手な作り方について相談できる先輩に教えてもらう
Q2. 「他のプロセスのやり方を変えることで、ボトルネックがより能力を発揮できる方法は何か?」
例
・塾長:「予習」がボトルネック
□ 「授業」終了時に次の予習内容を必ず指示する
□ 指示した予習内容の確認を必ず「授業」中に行う
□ 予習で扱った問題を必ず「小テスト」に入れる
具体的な打ち手になればなるほど、1つひとつの行動は「当たり前のこと」になります。大切なのは
ボトルネックが~だから、いまは…に集中する
ここまで論理的に分析してきた仮説に基づき、具体的にやることを決めていきましょう。
ボトルネックの能力を上げる方法を決める
「徹底活用する方法を決める」をやりきることが重要ですが、もし
考えられることはやりつくした!
投資をする意思決定を行う
ということです。ここまではお金のかからない改善活動ですが、
・徹底活用のためのやるべきことを十分にやった場合
・お金や集中的な時間をかけた方が話が早い場合
には、ボトルネックの能力アップに投資します。
例
・経営者:「成約」がボトルネック
→優秀な営業マンを雇う
・ブロガー:「企画」がボトルネック
→プロブロガーの有料noteを買ってみる
・塾長:「予習」がボトルネック
→「うまい予習のやり方」の単発講座を行う
ボトルネックの仮説が正しければこうした投資が見合う可能性が十分にあります。投資対効果を想定しながら投資に踏み切りましょう。
実行し、結果から仮説検証する
ここまでで決めた打ち手をしっかりと実行し、結果をみながら仮説検証を行います。
・決めた打ち手は本当に実行したか?【打ち手の実行の確認】
・決めた打ち手は狙った通りうまくいったか?【打ち手の結果の確認】
・アウトプットは増えたか?【全体の結果の確認】
これらを行うことによって、どこに課題があるのかを特定しながら、仮説検証を進めていきます。
特に、打ち手を実行し、打ち手の結果も上々なのに、全体のアウトプットが思ったように増えていない場合は、ボトルネックの仮説が間違っている可能性があります。その場合は「ボトルネックの仮説を立てる」まで戻って、検討をやり直しましょう。
おわりに
TOC制約理論の具体的な実践方法の全体像を整理しました。
いよいよ分析を開始し、ボトルネックの仮説をたてながら実践を進めてみましょう。きっとうまくいくはずです。