ウワノキカクのキカクメモ│問題解決のための論理・ロジカルシンキング

問題解決のためのロジカルシンキングを学ぶためのブログです。

仮説思考とは何か│「分析仮説」と「戦略仮説」の内容と作り方

【更新】2019/12/03

情報を鵜呑みにせず、自分なりの仮説を持とう!

と思っていても、情報をどう扱うか仮説をどう作るかの具体的な方法がわからなければ、実践することは出来ません。


そこでこの記事では

・「仮説思考」とは何か?
・分析仮説と戦略仮説の具体的内容
・「仮説思考」の実践&トレーニング方法

ビジネスの現場で仮説思考を徹底的に活用してきた経験からご紹介します。

仮説思考とは何か?~分析仮説と戦略仮説~

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現代は情報活用能力で差がつく情報戦である

現代は情報戦の時代である

これは1つの真実です。そしてその意味するところは、情報革命により誰もが平等に多くの情報にアクセスできる様になったことで情報そのものの価値は相対的に小さくなり、情報を活用した仮説構築能力によって圧倒的な差がつくようになりました。


仮説構築能力とは、同じAという情報を入手したときに

・Aという情報をそのまま活用しようとする人
・なぜAになったのかの前提や背景を分析し、また、Aから何が起きるか結果を予測して対策を打つ人

仮にこのニ者がビジネスで争った時、長期的に見てどちらに軍配があがるかは明らかです。例えば「○○ブームが来ている」という情報があったときに

情報をそのまま活用しようとする人
例:情報をそのまま活用して、「○○」を販売するビジネスを始める
→ブームが続く限りはうまくいくが、ブームの根本原因が消えたときに儲からなくなる

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うまくいくかは運次第で、客観的に見て

情報に振り回されている

と言えそうです。こうして客観的に見ていると「自分はそんな愚かなことはしない」と思いますが、ものを買う時にも

・「すごくよかったよ!」と友が言っていたのを思い出して購入する
・「~でNO1」という広告表示に惹かれて購入する

など、「情報をそのまま活用する」は私たちの日常的な意思決定そのものです。


一方、仮説構築能力が高い人はどう考えるかというと

仮説構築能力が高い人
例:「なぜ○○ブームが来ているのか?」とブーム発生の根本原因を分析し、そこから予測できるより大きなチャンスを予測し、そちらに手を打つ
より大きな成果を掴む

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人と同じ情報を手にしても、そこから自分なりの分析を行うことで人と違った結論を引き出すことが出来ます。そして、その仮説があたっていたときに、普通の人が手にすることが出来なかった大きな成果を手にします。

・情報に振り回される人
・情報を活用する人

この2つを根本的に分ける考え方が仮説思考です。
 

仮説思考とは:分析仮説と戦略仮説

仮説構築能力のもとにある仮説思考という思考法をご紹介していきます。

「仮説思考」とは
仮説思考とは、限られた既知情報から、未知情報を推論する因果関係のロジックを作る思考法
実践的には分析仮説・戦略仮説という2つの仮説を使い分ける

  • 分析仮説:与えられた情報の因果関係を論理的に考察する仮説(原因分析&結果予測)
  • 戦略仮説:目標達成までの施策展開の道筋を戦略として表す仮説

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ある情報を元手に、その情報を中心とした因果関係の考察である分析仮説をつくり、その分析をベースに目指す目標までの道筋を示す戦略仮説を作る。こうした具体的な2つの思考を以て仮説思考と言っています。


仮説思考は、因果関係で物事を考える原因と結果の論理に支えられています。この原因と結果の論理を活用するには「ブランチ」という思考ツールを理解する必要があるので、並行してそちらも確認してみて下さい。

原因分析と結果予測

分析仮説は「過去→現在」の因果関係を考察する原因分析と、「現在→未来」の因果関係を考察する結果予測の2つに分けられます。

分析仮説の2ステップ

  1. 原因分析【過去→現在】
  2. 結果予測【現在→未来】

ブランチがあれば過去と未来の2方向に仮説を立てることができる!

ブランチという手法を使うことで、「なぜそうなったのか?」という過去方向への仮説と、「これからどうなるのか?」という未来方向への仮説を作ることができます。
 

分析仮説「原因分析」の実践例:商品Aの売上低下

まずは原因分析の考え方です。ある事象に対して「なぜそうなったのか?」「どんな前提や背景があったのか?」と原因を探る分析です。ここではまず「今期は商品Aの売上が下がった」という事実があった場合の考察を例にします。


結果:今期は商品Aの売上が下がった
 ↑
原因:他社が新商品を出した

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この様に原因と結果をつないで考えるのですが、因果関係のロジックは

いつでも普遍的に成り立つか

という問いに答えられるほど、誰が見ても客観的に成り立つと言えるものでなければなりません。


例えば上記の因果関係であれば

他社が新商品を出すといつでも商品Aの売上は下がるのですか?

という問いに対して「YES」でなければなりません。冷静に考えて

「他社が新商品を出しても、影響が殆どないことだってたくさんあるよな…」
「需要の振れ幅が大きい業界だから、何も目立ったことがなくても数%は上下してるし…」

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十分に説明出来ない場合は、掛け合わせることで結果を起こしそうな2つ目の原因を考えてみて下さい。具体的には

原因1:他社が新商品を出した
 かつ
原因2???
 ↓
結果:今期は商品Aの売上が下がった

このロジックを満たす「???」がないか考えてみましょう。すると

そう言えば、新商品を出したX社は昨年マーケティング部門をヘッドハントしてたな!

ということに気づきました。

原因1:他社が新商品を出した
 かつ
原因2X社は昨年マーケティング部門の人財を強化した
 ↓
結果:今期は商品Aの売上が下がった

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今どき人が変わったくらいじゃ商品なんて売れないよ!

と当時横目で見ていたX社の動向が、今や無視できないものになっている可能性が浮上しました。


もちろんこれは「仮説」であり、本当に正しい因果関係かどうかはわかりません。次にX社が新商品を投入した際の市場の反応を見ることで、この仮説が正しいか仮説検証する必要があります。


この様に、2つ目の原因を意識して分析することによって飛躍的に原因分析の精度が上がります。詳しくは「因果関係の分析をする際には『2つ目の原因』を考えることが大切だ!」を解説している以下の記事もご参照ください。

分析仮説「結果予測」の実践例:X社の人財強化

続いて、原因分析の結果を使った結果予測です。過去・現在についてわかっていることから「これからどうなるのか?」を考察します。


具体例は先程の続きです。「今期は商品Aの売上が下がった」という現在から、今後どのようなことが起こりそうでしょうか?


原因:今期は商品Aの売上が下がった
 ↓
結果:今期は利益が低下する
 ↓
結果:来期のマーケティング予算が減る

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会社の利益が落ち込めば、マーケティングにかけられる予算も減ってしまう。ここに、原因分析で見えてきたX社の動向を加味するとどうなるでしょうか。


原因1:X社は昨年マーケティング部門の人財を強化した
 かつ
原因2:X社が新商品を出した
 ↓
結果:X社は新商品の売上が好調だ
 ↓
結果:X社は利益を拡大する
 ↓
結果/原因1:X社が更なる新商品を出す
 かつ
原因2:X社は昨年マーケティング部門の人財を強化した
 かつ
原因3:当社は来期のマーケティング予算が減る
 ↓
結果来期は商品Aのシェアが大きく落ち込む

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このままX社が好循環に入ってしまうとまずい…!

ということが見えてきました。何も手を打たなければ、商品AのシェアがX社によって奪われてしまう可能性すらあります。
 

戦略仮説「施策検討」の実践例:アップセルを狙う

そして、ここからこの悪い流れを断ち切るために、戦略仮説を作って施策検討することにしました。


施策①:来期の予算を今期同等で組む
来期のマーケティング予算を確保
施策②:商品Aの値引きプロモーション
来期も商品Aのシェアを維持する
施策③:商品Aの上位版を開発しアップセルを提案する
商品Aの上位版を開発しアップセルを提案する

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この追加の3つの打ち手により、来期、X社にシェアを奪われることを防ぎながら、自社の売上・利益を拡大するという戦略仮説を立てました。

後はこれをどうやって実現するかだ!

戦略仮説は、現時点ではまだまだ自社の都合の良いように描いた「絵に描いた餅」に過ぎません。この道筋を仮説どおりに実現できるか、ここからは仮説検証と実行力の勝負になります。


「絵に描いた餅」とはいえ、こうした明確な戦略仮説があるのと無いのとでは全然違います。

・組織のみんなで共通のロジックに向かって集中できる
・狙いと理由が明確なため、部門を越えた調整がやりやすい
・想定外の出来事が起こったときに、修正方法を考えられる

組織の統制を生み、効率よく目標を達成していくためには、こうしたロジックを持っておくことが非常に有効です。分析仮説・戦略仮説の2つを使うことによって、マネジメントのレベルを飛躍的に向上させることが出来ます。
 

仮説思考の実践方法&トレーニング方法

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「仮説思考」実践の3つのステップ

ここからは仮説思考を実践するための具体的な手順をご紹介します。

「仮説思考」実践の3つのステップ

  1. 分析する情報を決める
  2. 仮説(分析仮説・戦略仮説)を作る
  3. 仮説を検証する

以下、各項目に沿って具体的に解説します。
 

分析する情報を決める

はじめに、分析対象となる情報を決めます情報を選ぶ際の最重要事項

情報の具体性
「多い/少ない」ではなく「100億円/30%」など、具体性がなければ正しく考察できない
情報の正確さ
情報が誤っていると仮説も当然誤ってしまう
情報の中立性
はじめから結論ありきの情報源は、必要な情報を伏せ、部分的に切り取って編集されることが多い

十分に意味のある分析ができそうか?

と上記の3点を確認しながら考えてみて下さい。情報が不適切だと、以降の分析すべてを間違えてしまうので注意しましょう。
 

仮説(分析仮説・戦略仮説)を作る

次に分析仮説・戦略仮説をつくります

仮説(分析仮説・戦略仮説)の手順

  1. 原因分析:情報源から分析したい現象を決めて原因を考える
  2. 未来予測:分析結果を受けて、未来に起きることを考える
  3. 施策検討:目標を実現するための施策とそれによって起きることを考える

 ↓
分析仮説=1.原因分析+2.未来予測
戦略仮説=分析仮説+3.施策検討

いまは分析仮説だけでいいや!

というときは、原因分析と未来予測の2つでOKですし、目的によっては原因分析だけ未来予測だけ施策検討だけという使い方も勿論ありです。柔軟に使い分けて下さい。
 

仮説を検証する

最後に、仮説を検証PDCAサイクルを回します。此方については、下記の参考リンクを参照していただければと思いますが

・仮説通りの出来事が起こったか?
・起こらなかった場合、それはなぜなのか?
・わかったことを活かして、仮説をどの様に修正すべきか?

と考えていくことによって、仮説と現実のギャップから更に思考を深めることが可能です。

仮説思考のトレーニング方法

仮説思考の肝は、なんと言っても因果関係の思考の精度です。ご紹介したブランチを理解し、活用方法を日々トレーニングすることが重要です。

ブランチを理解する方法
①ブランチの解説記事で学ぶ
このブログではブランチの基本と実践を解説した記事がありますので、以下から必要なものを読んでみてください。
<論理的思考におけるブランチ>
【図解】論理的思考とは│論理の型でロジカルシンキングを実践的にトレーニング
<ブランチの基本>
因果関係の思考を鍛えるには?│「原因と結果の論理」の実践方法
因果関係の論理的思考実践│「ブランチ」作成入門
<現状分析の実践>
システムを分析し根本問題を見つける論理的思考│現状ツリー(CRT)
経営者が20代のうちに知っておきたかった「ロジカルシンキング」の基礎の基礎① ~「2つ目の原因」を語れ~
「原因に手を打つことが大切だ!」は本当か?①因果関係を一般化して考える
「原因に手を打つことが大切だ!」は本当か?②因果関係の分析が「ユルく」なってはいないか?
「原因に手を打つことが大切だ!」は本当か?③ある出来事は、複数の条件の掛け算で起きている【完】
<仮説検証の実践>
仮説思考で成長を仕組み化する「仮説検証スキル」のトレーニング
 
②書籍で学ぶ
より体系的にまとまった書籍で学ぶこともおすすめです。気になったものを手にとってみて下さい。
『考える力をつける3つの道具』岸良裕司
『子どもの考える力をつける 3つの秘密道具 お悩み解決! ! にゃんと探偵団』岸良裕司
『ザ・ゴール2 コミック版』エリヤフ・ゴールドラット
『頭のいい人の思考プロセス―すぐに使える、図と論理の問題解決スキル』リサ・J. シェインコフ
『ゴールドラット博士の論理思考プロセス―TOCで最強の会社を創り出せ!』H.ウイリアム デトマー

こうした情報で考え方を学びながら、日々身近な事柄でトレーニングを繰り返せばOKです。
 

おわりに

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仮説思考が身につくことによって、情報そのものではなく

その情報から何が言えるか?

と考える能力が飛躍的に向上します。


「本質思考」「仮説思考」を両輪で高めることによって、圧倒的な思考力を身に着けていきましょう。

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