ウワノキカクのキカクメモ│問題解決のための論理・ロジカルシンキング

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「論理」とは何か?論理を支える2つの原理「抽象度」と「因果性」

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Twitterでは「#朝論理」というハッシュタグで毎朝7時にロジカルシンキングのエッセンスをお届けしています。

このツイートで言っていることは、要は「『論理』とはなにか」ということ。


「論理的思考」「ロジカルシンキング」という言葉が大事だと言うことはあちこちで耳にしますが、「そもそも『論理』って何?」ということを説明してくれる人は皆無です。


そこで今回は

・論理とはなにか?
・論理を支える2つの原理「抽象度」と「因果性」とはなにか?

を解説します。

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「論理」とは何か?

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「論理」という言葉の意味

「論理とは何か?」に答えていくわけですが、過去に「論理」という言葉の辞書的な意味から考察している記事がありますので、興味がある方はそちらもご参照ください。


今回は「論理」という言葉を

帰納的意味:実践的にどう使われているか
演繹的意味:上位概念と比較してどういう位置づけで説明されるか

の2つの方向から解説していきます。 

「論理」の帰納的意味

まずは帰納的意味ですが、「論理」という言葉の代表的な使用例を2つ取り上げてみましょう。

①「その説明は論理がおかしい
②「論理的に話すことが大切だ」

いずれも一般的に利用される表現ですが、ここでは「論理」という言葉がどういう意味で使われているかを改めて考えてみましょう。


<①「その説明は論理がおかしい」>
まず、①「その説明は論理がおかしい」ですが、この言葉全体の趣旨は「その説明では理由に納得できない」ということでしょう。


「なんで遅刻したの?」という問いに対して、「昨日夜更ししていたのですが、電車が遅れてしまって」と言われれば、「その説明は論理がおかしい(その理由説明には納得できない)」となるわけです。


<②「論理的に話すことが大切だ」>
次に②「論理的に話すことが大切だ」ですが、これはどういう意味で用いられているでしょうか。


例えば、役員への新企画のプレゼンテーションの準備をする際、上司が部下に向かって「論理的に話すことが大切だ」と言うシーンにおいては、「聞き手である役員が企画に納得し、太鼓判を押してくれるように」という目的意識から発せられている言葉です。


<総合すると?>
①②両方の例に共通しているのは「納得」という概念


どうやら私たちは「理由を説明する→納得を得る」という因果関係が成立する場合に「論理(的)」という言葉を使っているようです。


そして、その手段側である「理由を説明する」にフォーカスを当てて言えば、「論理とは結論と理由のセットが十分に揃っていること」となるわけです。


このブログでは「論理の核心は結論と理由」「論理性=結論×理由」ということを主張していますが、これはまさにこの様な考え方から導き出される説明です。

「論理」の演繹的意味

反対に、上位の概念から演繹的に考えてみるとどうなるでしょうか。


論理の目的が「納得」だとするならば、「意味がわかる」という要素が必要です。


提示された情報の意味を正しく理解することなくして、その内容に納得することはあり得ません。


「意味」という概念に対する学術的な考察は、言語体系としては言語学の意味論、人間の認識する事柄としては脳科学や認知科学、更にそれらの融合した認知言語学といった学問領域において進められています(筆者は中でもメンタルスペース理論の着想に関心が高い)。


それらを踏まえて「意味がわかる」ということを端的かつ妥当に説明することは身に余る大仕事ですが、誤解を恐れずに言うならば、ある事象や概念の意味は、その他の事象や概念とのつながりの中で双方向的に生成されます。


<例1:お醤油>
例えば、朝食で目玉焼きを食べているときに言う「お醤油取って」の「お醤油」は、「テーブルの上にある、私の手には届かないところにあるそのお醤油」を指しますが、スーパーで買い物をしているときに言う「お醤油取って」の「お醤油」は、「棚に並んでいるたくさんのお醤油のうち、私が取ってほしいそのお醤油」という意味になります。


同じ「お醤油取って」という文字列でも、発話される際の状況(コンテクスト)との関係性(=他の事象や概念とのつながり)によって具体的な意味が生成されるのです。


<例2:買う>
他にもう一つ、つながりの中で意味が生成される例を挙げましょう。


例えば「買う」という言葉の意味を理解するためには、「商品」「お金」「買い手」「売り手」「取引」という他の概念が前提にあります。


もし、これらの概念を知らない人(例えば貨幣による取引が行われる前の時代の人)には、「買う」という言葉の意味を理解することはできないはずです。


<総合すると>
これらの例のように、「Aの意味がわかる」ということのためには、A以外のものとの関係性、すなわちつながりがわかることが不可欠です。


ただし、先程見たように「昨日夜更ししていたのですが、電車が遅れてしまったので」では意味がよくわかりません。


意味がわかる関係性の作り方には一定のルールがあり、そのつながりルールのことを「論理」と私たちは呼んでいます。


「論理的に話してください」は、「理由が納得できるように話してください」(帰納的意味)ということであり、「つながりのルールに沿って話してください」(演繹的意味)ということでもあります
 

「抽象度」と「因果性」で世界は成り立っている

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「論理」を支える2つの原則

ここまで2つの視点で「論理」という言葉の理解を深めて来ましたが、以降は「論理」の演繹的な意味合いである「つながりのルール」という側面を更に深堀りしていきます。


前述の認知言語学はじめ、意味理解には様々なモデルが提唱されていますが、このブログでは「抽象度」と「因果性」の2つの概念で論理の実態を定義しております。


論理とは意味を生成する関係性のルールそのものであり、そのルールは静的な側面を規定する「抽象度(Levels of abstraction)」と動的な側面を規定する「因果性(Causality/Causation)」の2つの異なる原理から成る、というモデルです。

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人間はこの2つの原理によって物事を整合的に認識し、意味がある・ないを判断していると考える理論です。
 

「抽象度」とは何か

1つ目の原理である「抽象度」について説明します。


「抽象度」とは、情報量と包含関係によってすべての概念を階層構造にして認識する、論理の静的な側面です。


情報工学、情報技術におけるオントロジーとほぼ同じものを指しています。


「花」という概念を例にとって説明すれば…

・「花」は「植物」の下層に位置する概念で、「植物」の持っている情報すべてに「花」固有の情報を加えた情報を持つものとして位置づけられる
 
・花は光合成をするが、それは「花」に光合成をする固有の特徴があるからではなく、「植物は光合成をする」という情報が上位概念である「植物」に含まれているから
 
抽象度の階層構造は上層にも下層にもつなげることが可能で、「花」の下層には「パンジー」「すみれ」といったより具体的な花の名前をぶら下げることができる

詳しく書けばいろいろなことが言えますが、この情報の階層性に沿った認識の原則に沿って説明されれば、人は知らない言葉でも意味を理解することができます。


抽象度についてはより詳しく解説した記事がありますので、ぜひそちらも御覧ください。

「因果性」とは何か

2つ目の原理は「因果性」です。


「因果性」とは、原因と結果をつなぐ変化は事物がもつ一定の変化の法則性によるとする、論理の動的な側面です。

・タネを土に植えて水をあげれば芽が出る【タネの法則性】
 
・コンセントを指して電源ボタンを押せば番組が見れる【テレビの法則性】
 
・身体を洗って温かいお風呂に浸かればリラックスできる【入浴の法則性】

自分が知っている法則に沿った変化であれば「そうだよね」と納得し、自分が想定していなかった変化が起きれば「どうしてそうなるの?」と思います。


原因と結果は何でもつなげられるわけではなく、一定の法則性を説明できる事柄のみが因果関係でつながります。


「因果性」についての詳しい解説は以下の記事をご参照ください。

2つの原則を踏まえて、もう一度「論理」とは何か:論理の3つの型について

論理は「つながりのルール」であり、「抽象度」と「因果性」という2つの原理によって支えられてる、というのがここまでの全体像でした。


これらを踏まえてもう一度「論理」というものの実態を捉えるならば、論理には3つの型があると整理できます。

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論理が「つながりのルール」だとするならば、「何と何ならつなげてよいのか?」が気になるところ。


抽象度と因果性という2つの原理に則ると

論理の3つの型
✅ 具体と抽象のつながり【言い換え】
✅ 部分と全体のつながり【構造化】
✅ 原因と結果のつながり【因果関係】

という3つの「つなげてよいもののバリエーション」に整理することができます。


「言い換え」と「構造化」はともに抽象度から派生しているので、具体と部分、抽象と全体には呼応する関係があります。


具体的な用例を見てみましょう。

「言い換え」の例
「花とは植物の一種で、パンジーやすみれのことを言います」
【抽象】植物
 │
【言い換えの対象】
 │
【具体】パンジー・すみれ

「花」という言葉を具体的な概念、抽象的な概念で言い換えて説明することで、その意味を明らかにしています。

「構造化」の例
「花とは草や木とならぶ植物の一種で、パンジーやすみれが含まれます」
【全体】植物
 ├ 【部分】
 ├ 【部分】
 └ 【構造化の対象】
  ├【部分】 パンジー
  └【部分】 すみれ

この様に概念の構造を示されると「この人は草・木と並ぶ、別個のものとして花を捉えてるるんだな…」ということがわかります。


一般に「花」というと、パンジーやすみれそのものを「花」ということもありますが、「桜の木の花びらの部分」といった一部分を指すこともあり、この人は前者の意味で「花」という言葉を使っていることになります。

「因果関係」の例
【原因①】パンジーのタネを土に植えた
【原因②】毎日必要な水を上げた
 ↓
【結果】パンジーの芽が出た

タネには適当な環境を与えれば芽が出るという法則性がありますので、その通りに変化が起きたと言われれば誰もが納得します。


この様に、「言い換え・構造化・因果関係」といった論理の3つの型に沿って説明されれば誰にでも意味が理解できる、ということになります。

関連記事

論理の3つの型についてはこちらも参照
【図解】論理的思考とは何か│論理の型でロジカルシンキングの実践法を紹介

「論理」の使い方:意味・新しい価値体系の生成

最後に、「論理」の使い方について一言だけ添えておきます。


冒頭で演繹的に意味を確認しましたが、論理の本質は意味の生成です。


論理に沿って情報を整理することで、誰の目にも理解可能な意味や価値の体系を主体的・能動的に作り上げることが可能です。


この「意味を作る」という論理の機能から、次の2つの「論理の使い方」が導き出されます。

論理の使い方
①思考を共有する【コミュニケーション】
②アイデアを実現させる【内省】

①の「思考の共有」はまさに文字通りで、ある人が頭の中に思い描いているものを相手にも同様に認識させるには論理が必要です。


言い換え・構造化・因果関係の3つの型を駆使することで、自分と相手の理解の前提のズレを徹底的に埋めることができます。


もう一つ、重要な使い方が②のアイデアの実現です。


例えば、直感的に「これはすごい!」とひらめいた着想があったしても、それをそのまま他人に説明してわかってもらうことは至難の業。


なぜそれが困難かというと、アイデアがひらめいた自分の頭の中にも、まだ抽象度と因果性に沿った体系的な情報構造がはっきりと見えておらず、明確な価値として存在していないからです。


そこで、自分のひらめきへの確信を頼りに、それがなぜ価値あるものなのか、それ自体がどういうものなのかを「言い換え・構造化・因果関係」の3つの型を使って徹底的に整理します。


誰の目にも明らかなロジックとして整理できた瞬間、直感的なひらめきは存在可能性をもつ「意味」へと変化し、現実に影響を及ぼしうる大きなエネルギーとなります。
 

おわりに

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このブログでは「論理的思考」という切り口から、本質的な思考力を育むための情報発信を行っています。


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