このブログでは、さまざまな思考・実践方法を通じて問題解決を成し遂げるためのアイデアを記載しています。
そうしたHOWの知識は必要不可欠なのですが、そもそものところ「問題が解決しているとはどういうことか」についてはあまり触れずにいました。
そこで今回は、「『問題が解決している』とはどういうことか?」について筆者の考えを言葉にしつつ、そこからコンサルタントが問題解決を行うときに何を考えているのかを解説していきたいと思います。
「問題が解決している」とはどういうことか?│コンサルタントの視点・哲学者の視点
【確認】「問題」の考え方
話の前提として「問題」という言葉の意味を改めて確認しておきます。
このブログでは、「問題」を「現在(及びその延長線上)では目指す状態に到達しないと考えられる場合にネガティブな感情を伴って認識される事実」、一言で言えば「理想と現状のギャップ」捉えています。
例えば「収入が少ないのが問題だ」と思っている人の場合
●目指す状態【理想】
収入がXだけある状態
●現在(及びその延長線上)【現状】
収入がYである状態
●問題【理想と現状のギャップ】
収入がX-Yだけ不足していること
という構造から、その人が認識している問題を定義します。
「問題が解決している」とは?ー言葉の演繹的な定義から
このように考えると、「問題が解決している」ということの一義的な意味は非常にシンプルで、
問題が解決している = 理想と現状が一致している
ということに他なりません。
先程の例で言えば、問題を解決するための戦略としては
①「理想」を変える
目指す収入をXからYに下方修正する(=現状に満足する)
②「現状」を変える
現在の収入をYからXに上げる(=現状を理想に変える)
これらに加え、①と②を組み合わせた折衷案を含め、現実的な落とし所を探ることが人間にとっての問題解決です。
「問題が解決している」とは?ー問題を抱える人間の本音から
このように、言葉の定義から演繹的に考えることで満足すれば話は非常に簡単なのですが、この場合の私たちは概念を整理したいわけではなく、実際に収入を増やして満足を得たいというのが本音です。
ですので、当たり前ですが①の戦略を提示されても「そう思えたら苦労はしない」というのが率直な感想。
つまり、現実を生きる私達にとっての実際的な問題解決とは、文字通り問題を解決(解消?)することではなく、目標状態を実現することを指しています。
「問題が解決している」とは?ー問題解決者(コンサルタント)の視点から
ここまでが前提となる話で、ここからが今回の記事の本題です。
コンサルタント、すなわちビジネスの現場において問題解決者として実際に責任を担う人間からすれば、「では、どうやって目標状態の実現にこぎつけるか?」が関心の的であり、腕の見せどころです。
問題解決の実務において問題解決者が最初に答えるべき問いは決まっています。
それは、「なぜその理想は実現していないのか?」です。
人も組織も決して愚かではなく、その時々の状況に合わせ、理想状態の実現に向けて日々最適な意思決定を繰り返し、最善の努力を重ねています。
それにも関わらず理想が実現できていないのは何故なのか。
例えば、「年収Yが実現できていない理由」を考えるなら
・そもそも年収Yを実現する方法を知らない
・方法は知っているが、忙しくてそのための準備に時間が取れない
・複数の選択肢があり、決めきれずに二の足を踏んでいる
・実現しようとすると、現状の大事なものを犠牲にすることになってしまう
など、こうした「理想が実現しないからくり」を解明することなく、問題を真に解決することは決してできないと考えるのが問題解決者の視点です。
こうした考え方からすると、「問題が解決している」ということは「『理想が実現しないからくり』を解明し、それが解消したことによって理想が実現できている」ということです。
その問題が生じている理由まで理解し、その問題の重要さと困難さに共感し、それでもなお未来を見据えて泥臭くクライアントと奮闘するのが、問題解決者としてのコンサルタントの視点です。
「問題が解決している」とは?ー哲学者の視点から
更に視点を変えて、哲学者の視点から「問題が解決している」を見ていきたいと思います(私は哲学者ではありませんが、「哲学に関心のある人」という広い意味で眺めてください)。
哲学的な関心からすると、「理想と現実が一致している」というのは「理想状態として記述される可能世界と現実世界が無矛盾である」と捉えることができます。
「無矛盾」というと少し難しい感じがしますが、文字通り矛盾がない状態を指しています。
例えば、先程の収入の例で言えば
●理想として記述される可能世界
現在の収入がXである
●現実世界
現在の収入がYである
という2つの世界の記述があったとき、「現在の収入」は1つの値しか取れませんので、「現在の収入はXかつYである」という命題は真ではありえず偽(→矛盾)となります。
ではどうやってこの矛盾を解消するかというと、最も簡単なのは時間軸を変えることです。
つまり
●理想として記述される可能世界
1年後の収入がXである
●現実世界
現在の収入がYである
というように理想状態を未来に設定することで、「現在Yである収入が1年後にXになる世界線」という矛盾のない、1つの大きな、統合的なストーリーを持つことが可能になります。
そして、「どうやってそのストーリーを実現するか」の具体的な目処が立てば、あとはそれを実行するだけの状態になりますので、「収入が少ない自分はだめだ」と自己嫌悪することがなくなり、むしろ「私は収入がYに増えていく人生を歩んでいる」というワクワクと充実を感じることができます。
もちろん、目標状態を実現するための具体的な方法を見つけることは容易ではないかもしれません。
しかし、矛盾を抱えてストレスで思考停止に陥った状態からは確実に脱することができますし、仮にその方法がすぐに見つけられなかったとしても、目標の実現に向けて力強く進んでいる毎日は確かな生きる手応えが感じられる、非常に充実したものになります。
コンサルタントが「方法」を見つける方法
最後に、その「具体的な方法」を見つけるための方法について、問題解決の実務者であるコンサルタントとしての考え方に簡単に触れておきます。
先程、コンサルタントは「理想が実現しないからくりを解明する」ということを書きましたが、それと逆のことを未来の可能世界についても行います。
つまり、「未来の可能世界においてどのようにして自分は目標を達成しているのか」のからくりを先に想定します。
かねてからの例で言えば
1年後に収入Yを得ている自分は…
・どんな仕事をしているか
・どんなところに住んでいるか
・どんな人とつきあっているか
・毎日何を考えているか
etc
といった、その時自分が体感しているシステムの全体像をイメージします。
もちろん、そのイメージが現実的にありえないものではだめで、「コンビニでアルバイトをするだけで年収1億円を得ている」といった内容ではいけません。
いまの自分がそのままできるかどうかは別として、「そうした状態は現実的にあり得る」という内容をイメージする必要があります。
そのためには、知識や情報が必要です。
仮に「1年後に年収1億円」を目標とするなら、「世の中で年収1億円を得ている人はどのような手段をとっているのか」に関する情報を集めることからスタートします。
そうして情報収集を繰り返し、妄想を膨らませながらイメージをつくることで可能世界の中で起こっている因果関係を詳細に記述することができるようになると、自然と「では、何から着手すべきか」が見えてきます。
これはつまり、コンサルタントのアプローチは本質的にゴールドリブンであるということです。
クライアントが問題を提示したら、コンサルタントは目標状態を想像し、クライアントと議論しながらあるべき姿を絞り込むことから着手します。
その情報収集力、目標状態のイメージ構築力、クライアントに「それが実現したかったんだ」と思わせる力がコンサルタントの最初の腕の見せどころというわけです。
おわりに
今回の記事では「問題が解決している」ということの意味を様々な角度から整理することで、目標を実現するために何をどのように考えるべきなのかを考えて来ました。
このブログではさまざまな問題解決の考え方、方法論などについても触れていますので、ぜひその他の記事も参照してみてください。
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