仮説が当たると嬉しい!
しかし「仮説検証を通じて目標達成を実現する」という観点からは、むしろ仮説は外れた方がいいと言えます。
そこでこの記事は
・なぜ仮説は外れた方がいいのか?
・仮説思考を実践するための重要なマインドセット
を解説します。
仮説は外れた方がいい理由
仮説は当たった方がいいのでは?
仮説というのは、自分が知識として知らないものでも
~のはずだ!
・自分で目標を決めて「~すれば…という結果が出るはずだ!」と作戦を立てる
・ニュースを見たときに「~になったのは…が原因のはずだ!」と分析する
せっかく時間を使って自分で考えて立てた仮説なので、当然「仮説は当たってナンボ!」と直感的には思うもの。
しかし「仮説思考を習慣にして自分を成長させよう!」と思っている方であれば、むしろ
仮説は外れてくれた方が嬉しいことだ!
仮説が当たることのメリット・デメリット
まずはじめに仮説が当たることで得られるメリットを整理しましょう。
仮説が当たるメリット
- 嬉しい!
- 仮説の裏付けが取れたことで、仮説の正しさが確認される
何よりも「やった、嬉しい!」という達成感・高揚感は何事にも代え難いやり甲斐ではありますが、それ以外にも「正しいことが確認された」というのは価値があることではないでしょうか。
一方で、仮説が当たることにはこのようなデメリットがあります
仮説が当たるデメリット
- 新しい気づきや学びが得られない
これは見過ごされがちですが、仮説が当たったということは学びがなかったということです。過去の自分の知識と思考力が十分であったことの証明にはなるかもしれませんが
予想通り、予想していたことが起きた
例
仮説:雨の日は地下道を歩くことで濡れずに済む
↓
結果:濡れずに済んだ
これは極端な例に見えるかも知れませんが、仮説が当たったということは「自分の学びに繋がるチャレンジングな課題に挑戦していない」ということ。
仮説思考を習慣化することで自分の能力を高めたい!
仮説が外れることのメリット・デメリット
逆に、仮説が外れることのメリット・デメリットを整理しましょう。
仮説が外れるメリット
- 正しい知識や情報が定着する
- 自分の考え方の何が間違っていたのかがわかる
仮説を立てて振り返った結果、仮説と違った事実が確認されたとき
どうして間違ったんだろう?
ここからが最も重要なことですが、仮説を外して振り返ることで自分の考え方の間違いに気づくことが出来ます。
~なはずだ!
例
仮説:チームの営業成績が下がった原因は、新しく配属されたAさんが仕事が出来ない人でみんなに迷惑をかけるからだ
↓
結果:景気変動の影響で業界全体の成績が下がっていた
こうした仮説検証(仮説は外れていた)があったとき、想定されるこの人の考え方は
・全体の状況を確認することなく、目に見えるものだけで判断する
・チームの成績は仕事のシステムではなく個々の能力で決まると考える
といった思考のクセ・判断のパターンがあるかもしれません。仮説検証を繰り返すうちに
いつも同じことで間違ってるな…
一方、仮説が外れることのデメリットは
仮説が外れるデメリット
- 仮説にしたがって行動したことで、結果的に間違った行動をしてしまう
こうしたことを上げる人がいるかもしれません。これについては
・早めに間違いに気づけたのでむしろ良かったのでは?
・もともとの知識や考え方を間違えていたのであれば、仮説を立てようと立てまいと同じ行動をしていたのでは?
ということを考えると、上記のデメリットは問題であるというより、むしろ望ましいことだと分かります。
より早く間違いに気づき、修正する!
重要な前提:今の自分では目標達成が困難
もう少し踏み込んで目標達成について考えてみましょう。目標達成を目指すときに、「目標達成のための行動計画」という仮説を作ることがあります。
「目標達成のための行動計画」例
目標:今月は3件契約を取る
行動計画:毎週2件の新規アポを取る
→「毎週2件の新規アポを取れば、今月は3件契約が取れるはずだ」という仮説
よくある目標設定のやり方ですが、ここには本質的な課題が潜んでいます。それは
そもそも目標は、今の自分では達成が困難だから立てている
という前提です。この前提があるときに
この仮説は正しいだろうか?
ここには2つの本質的な課題があります。
目標達成に向けた仮説の2つの本質的課題
◆課題1「行動計画の実行可能性の困難」
原因:目標の達成は今の自分にとって困難である
↓
結果:設定した行動計画自体も今の自分には困難
↓
結果:行動計画が実行出来ず目標が達成できない
例
「毎週2件の新規アポを取る」という行動計画自体が難しく、なかなか2件アポが取れる週が作れない
◆課題2「行動計画の妥当性の弱さ」
原因:目標の達成は今の自分にとって困難である
↓
結果:仮説を作っても「絵に描いた餅」になる
↓
結果:行動計画を完璧にやっても目標が達成できない
例
「毎週2件の新規アポを取る」を集中してやりきったにも関わらず、目標の3件の契約にたどり着かなかった
目標達成に向けた仮説はうまくいかない前提で考える
これが論理的にとても大切な視点です。もちろん、この因果関係には様々な前提が含まれるので、必ずこの通りに起きるわけではありません。しかし、本質的には
出来ないことをやろうとしている
・仮説通りの行動計画はできない
・行動計画通りにやっても目標は達成できない
これが現実です。だからこそ、目標達成の仮説を立てるときには、厳密さや正確さを追求するのではなく
仮説をざっくりと作ったら、まずは一度それに沿ってやってみて、仮説の間違いの修正に時間をかける
仮説思考実践者のマインドセット
3つのマインドセット
ここまでのポイントは
・仮説は外れた方が気付きや学びが多いから良い!
・目標設定型の仮説は、むしろ上手くいかないものと思って考えよう!
こう振り返ると、仮説を持つ事の本質は間違うことだとわかってくるかと思います。誤謬可能性を積極的に認めることが非常に重要です。
3つのマインドセット
- 【学びが第一】失敗・間違いを恐れずに考え続けよう!
- 【失敗から学ぶ】何が間違っていたのか必ず振り返ろう!
- 【仮説検証は習慣】1回でも1分でも多くの時間を作ろう!
以下、仮説思考を実践するためのこれら3つのマインドセットを解説します。
【学びが第一】失敗・間違いを恐れずに考え続けよう!
最も重要なマインドセットは「【学びが第一】失敗・間違いを恐れずに考え続けよう!」です。「学び・成長」と「成果・成功」には因果関係があり、より多く学べばより大きく成長できることに異を唱える人はいないはず。しかし、ここで人は2つの種類に分かれます。
・「成果・成功」という結果を重視する証明マインドセット
・「学び・成長」という原因を重視する成長マインドセット
前者の証明マインドセットは曲者で、成果を出す・成功することを重視するあまり、いわゆる「勝てる勝負」ばかりを選択し、困難な領域や経験の乏しい領域に挑戦することを避ける傾向があります。学びや成長の機会が損なわれますので、長い目で見るとうまくいかないパターンです。
後者の成長マインドセットは、自分が学びや成長の機会を得られることそのものを喜びに感じるタイプです。知的好奇心の旺盛な人はまさにこの特徴が現れています。失敗や恥を恐れずに積極的に行動できるため、中長期的に高い成果を生み出すのは成長マインドセットの人です。
成長マインドセットで生きよう!
【失敗から学ぶ】何が間違っていたのか必ず振り返ろう!
次に「【失敗から学ぶ】何が間違っていたのか必ず振り返ろう!」です。仮説思考を実践するに当たって
失敗は避けられない!というか、失敗は望ましいもの!
ただし、仮説を立ててそのままにしては意味がありません。何が合っても必ず立てた仮説の振り返りを行いましょう。
・どこが間違っていたのか?
・なぜ間違えたのか?
・どう考えればうまく判断できたのか?
と丁寧に仮説検証することが、学びと成長のために大切なことです。
【仮説検証は習慣】1回でも1分でも多くの時間を作ろう!
最後に「【仮説検証は習慣】1回でも1分でも多くの時間を作ろう!」ということで、仮説を振り返ることは1回やれば十分ということではありません。「仮説→検証→仮説→検証」は終わりなく続く習慣として身につけることが大切です。
身近なことに疑問をもち
・なぜこうなっているのだろう?
・詳しくはどういうことだろう?
と知的感度を高めながら、仮説検証を習慣にしていきましょう。
おわりに
仮説は外れた方がいい!
ぜひ繰り返し自分に落とし込みながら、仮説思考の実践を自分のものにしていきましょう。
◆【第1講】知的好奇心の本質「仮説」を理解する
◆【第2講】仮説思考実践者のマインドセットを理解する
◆【第3講】仮説思考の実践方法を理解する
◆【第4講】仮説検証を理解する
◆仮説思考の基礎講座│知的好奇心を武器に自分の頭で考える人の発想法まとめ
◆思考の教科書【全体解説】
記事になる前の「思考法や科学の知識」「考え方のアイデア」をツイートしています。ぜひフォローをお願いします。
ウワノキカク@思考法ブロガー (@Uwapon) | Twitter