ウワノキカクのキカクメモ│問題解決のための論理・ロジカルシンキング

問題解決のためのロジカルシンキングを学ぶためのブログです。

「考える/思考」の実践的定義の提案│GoogleX「3つの思考」と二重過程理論

「考える」って、現実的には何をすること?

「考えよう!」と言われるたびに、「でも、考えているつもりだけど…」とわからなくなることがあります。


そこでこの記事では

・「考える」「思考」のわかりやすい実践的な定義
・背景にある実践的・科学的研究

をご紹介していきます。

「考える/思考」の実践的定義の提案

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【定義】考える・思考=問いを立てて答える

実践的に定義するならば、考える・思考とは問いを立てて答えることと考えるのがよいのではないでしょうか。

「考える/思考」の実践的定義

  • 問いを立てて答える(=「自問自答」する)

「問いを立てる→答える」という2つの行動のセットで「考える」だと捉えることの提案です。


一般的に「考える」という時は「答える」の要素に重きが置かれているように感じますが

むしろ「問いを立てる」の方が遥かに大事だよ!

ということがポイント。もう少し踏み込んで解説していきます。
参考

【決定版】論理的思考とは(ロジカルシンキング)│3つの論理とトレーニング法
こちらでは「考える」に加えて「論理的」という言葉も実践的に定義・解説しています

考えているとき、いないとき

「考える」を「問いを立てる」「答える」の2つの行動に分けた時、その◎/✕によって人間の認知を4分類することができます。

「問いを立てる」「答える」による4分類
①「問いを立てる:◎」かつ「答える:◎」→考える
例「何故広告を出したのに売上が伸びないのだろう?」と疑問が生じ、想定される原因を書き出す
 
②「問いを立てる:◎」かつ「答える:✕」→悩む
例「どうしたら売上がもっと増やせるだろうか?」と思いながら、打ち手が見えないまま一週間が経った
 
③「問いを立てる:✕」かつ「答える:◎」→反応する
例「売上が伸びない原因は何ですか?」と聞かれて、頭の中で原因を想定し、思いつくことを答えた
 
④「問いを立てる:✕」かつ「答える:✕」→認める
例「今の課題は広告がターゲットにリーチしていないことです」と言われて、追加の広告費を出すことを決めた

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一般的な会話ではどれも「考えた!」と言いますし、勿論どれも意味のある人間の認知作用なわけですが、「得られるアウトプット」という点からすると②~④は①に比べると質が落ちてしまうので

「自分のアタマで考える」は「自ら問いを立て、答えること」と覚えておこう!

という方針を提案しております。
 

GoogleX「3つの思考」と二重過程理論

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GoogleX「3つの思考」とは

思考の種類とアウトプットというテーマについては、元GoogleX最高業務責任者(Chief Business Officer)のモ・ガウダット氏(Mo Gawdat)が2017年の『Solve for Happy』という書籍の中で以下の様に述べています(日本語訳は筆者による)。

私たちの思考というのは、無益な言葉による絶えない流れのようだと感じることがあります。ところが実際、多くの場合、私たちの最も価値ある思考というのは静かなものです。私たちの脳が生み出す思考には3つのタイプがあります。問題解決に使う分析的思考、目の前のやるべきことに焦点を当てた経験的思考、おしゃべりのような絶えない思考。これらは明確に異なるもので、それぞれ脳の別々の部分で発生する思考です。
▼原文
While it sometimes feels that all of our thoughts are an incessant stream of useless blabber, the reality is that our most useful thoughts are usually silent.There are three types of thought that our brains produce: insightful (used for problem solving), experiential (focused on the task at hand), and incessant (chatter).Those types are so distinctively different from each other that they occur in different parts of our brain.

Solve For Happy: Engineer Your Path to Joy

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  • 作者:Gawdat, Mo
  • 発売日: 2019/01/10
  • メディア: ペーパーバック
分析的思考経験的思考は、いずれも違った観点から私たちの生活に役立ってくれます。未来を見据えた抽象的な思考で計画を立て、また、現在のタスクに集中することで物事を進めてくれます。


しかし、絶えない思考(incessant thought)は問題や不満、不安に引き寄せられて、ネガティブな考えを次々と自動で作り出します。例えば、先程の4分類のうち、以下の2つは絶えない思考の餌食になりやすいです。

②悩む
絶えない思考によって、解決方法のないネガティブな問いが次々と生まれる
例「なぜ自分はこんなにダメなんだろう」「なぜ自分はいつも失敗してばかりなんだ」
 
③反応する
絶えない思考によって、非合理的な答えを選択してしまう
例「仕事を辞めて仮想通貨やFXで稼ごう。周りにもそれで成功している人がいるっていうし…」

二重過程理論とは

絶えない思考なんてなかったらいいのに!

と思いたくなりますが、こうした思考が生まれてしまうのは人間の脳の合理的な機能によるものです。

二重過程理論(dual process theory)とは

  • 2002年にプロスペクト理論でノーベル経済学賞をとったダニエル・カーネマンをはじめ、心理学・認知科学・経済学などの数多くの研究者によって体系化された理論
  • 人間は本能的・直感的なアプローチ(システム1)分析的・論理的なアプローチ(システム2)という2つの判断方法を相補的に活用することで合理的に判断している
  • もともとは「なぜ人間は、数学や哲学など抽象的な概念を体系化する能力を持ちながら、一方で、簡単に統計的・合理的に誤った判断をしてしまうのか?」を、科学的に説明する理論として提唱された

二重過程理論―進化的に新しいシステムは古いシステムからの出力を修正しているのか?(2017)によると、システム1・システム2からなる2つの思考モードは以下のように特徴づけられます。
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※上記論文より引用
詳しくは、ダニエル・カーネマン著『ファスト&スロー(上・下)』をぜひ御覧ください。

直感的・情緒的作用を司るシステム1が、先程の絶えない思考(incessant thought)を生み出す原因です。人間の自己防衛本能と連携し、想定されるネガティブな問題に無意識的・感情的に反応し、連想によって様々な負の発想を引き出してしまうのがその正体です。

「問い」こそ主体的な人生を手にする秘訣

「考える」「思考」を「問いを立てる→答える」の2つの行動のセットと定義しよう

と主張しているのは、このシステム1の暴走を止め、分析的・経験的な思考を積極的に活用するため、という要素があります。ムダなことに悩んだり、本当は些細なことなのに重要なように感じて反応してしまうのを抑止するためにも

自ら問いを立て、自分で考えるべきことを決める

という積極的な発問の姿勢が知的態度として重要です。

・他人に与えられた問いに夢中になり、気づけば自分の時間がなくなっている
・全体を見れば重要ではないことに感情的に反応し、疲弊してしまう

こうしたことをなくし、主体的・能動的に意思決定して人生を生きるためにも

自分で問いを立てる

を意識し、自分の時間、自分の人生を生きていきましょう。
 

おわりに

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「考える=問いを立てる+答える」という形で記憶することによって

ちゃんと自分で問いを立てて考えているかな?

と振り返るきっかけになれば幸いです。


「自分のアタマで考える」の実践的な学びになれば幸いです。


引き続き「言い換え」「構造化」「因果関係」の3つの論理の型についての解説を増やしていきますので、TwitterのフォローやSNSでの記事のシェアなどよろしくお願い致します。

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【言い換え】
同じ意味で言い換える論理の型「言い換え」とは?│論理的思考と抽象度の濃密な関係
【構造化】
構造化って何?なぜ必要?│合理的な意思決定に構造化の論理展開が必要な理由
合理的な意思決定の根幹「構造化の論理」具体的実践方法①ー分析
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因果関係の思考とは何か
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