ウワノキカクのキカクメモ│論理的思考・問題解決のトレーニング

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コンビニおでんを辞めたらどうなるか?│ボトルネックに基づく経営判断

先日NewsPicksでこんなニュースが流れていました。

儲かりそうなのになぜコンビニはおでんを辞めちゃうの?

という疑問と(おでん好きの悲しい声)もあがるところ。


そこで今回は

・なぜコンビニはおでん販売を辞めちゃうの?
・やめちゃって本当に大丈夫なの?

を解説していきます。

コンビニおでんを辞めたらどうなるか?

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結論:売上・利益はおそらく下がらない

コンビニがおでん販売を辞めたら、その店舗はどうなるでしょうか? 結論から言えば

コンビニはおでんをやらない方が儲かる可能性が十分にある!

と言えます。


なぜそういい切れるかというと、いま日本中で叫ばれている「人手不足」という現象があるからです。この点を解説していきます。
 

おでん販売中止のロジック

まず「コンビニおでんを辞めた店舗が出てきたよ!」という記事から読み取れる、おでんの販売中止・縮小に至るロジックは以下の通りです。

おでん販売中止のロジック
原因1:おでんは利益が出しにくく、販売に手間がかかる
 かつ
原因2:従業員は人手不足の状態である
 ↓
結果:おでんの販売を中止・縮小する(その方が儲かる)

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おでんって利益も出しにくいし手間がかかるんだ!だったら最初からやらないほうがよかったじゃん!

と思った方もいるかも知れませんが、それは必ずしも正しいとは言えません。「従業員の人手不足」という事象がなければ、薄利で手間がかかったとしても、追加の利益を上乗せするために人手をかけておでんを売った方が良いのです。

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1円でも多くの利益を得たい中、雇っている従業員が毎日暇そうに店舗で過ごしている。そんな状況だったら「売上を増やすためにもっと頑張れ!」といいますよね。


そんな状況であれば、少しでも利益を増やすために、スタッフが丁寧におでんの準備をし、おでんのにおいを街に振りまき、一人でも多くのお客様が買ってくれるよう働きかけるのが合理的。


しかし、今は「人手不足」の時代。スタッフは常に忙しそうにしており

薄利で手間のかかるおでんなんか売ってる場合じゃない

という環境なのです。
 

ボトルネックは「従業員の時間」

これをTOC制約理論の観点から説明すると

・「人手不足」の状態:「従業員の時間」がボトルネック
・「人手余り」の状態:「お客様の数や単価」がボトルネック

という違いがあります。TOC制約理論はっボトルネックがシステムのアウトプットの上限を決めていることを明らかにしました。したがって、売上・利益を最大化するためには

ボトルネックの状況がどうなっているか?

に注目することが最も重要です。


現在の様に「人手不足」のときには、人手、つまり従業員が働いている時間がボトルネックです。決まった労働時間に対して、最もコスパのいい作業を指示することが大切です。


一方で、少し前の日本の様に「人手余り」のときには、「お客様の数や単価」がボトルネックでした。お客様が最もお金を払いたくなるような快適なサービスを提供することが重要でした(「おもてなし」ジャパンの得意な領域と言えるかもしれません)。


一方では「従業員の時間」を重視し、他方では「お客様へのサービス」を重視する。この視点の違いこそ「ボトルネックがどこにあるか?」という判断そのものです。

従業員の「時間あたり利益」で意思決定する

以上のように考えると、冒頭の「おでん販売中止のロジック」をボトルネックの概念を入れてより精確に記述するならば以下のようになります。

おでん販売中止のロジック【更新】
原因1:おでんは従業員の「時間あたり利益」が低い
(おでんは利益が出しにくく、販売の手間がかかるため)
 かつ
原因2:従業員の時間は「時間あたり利益」の高い仕事に使うべき
(従業員の人手不足によりボトルネックは従業員の時間だから)
 ↓
結果:おでんの販売を中止・縮小する(その方が儲かる)

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ボトルネックが明らかになったことによって、従業員の「時間あたり利益」を最大化する手を打つのが正しい経営判断であることがわかってきました。

「時間あたり利益」って何?

急に出てきた「時間あたり利益」という概念を説明すると

時間あたり利益=得られる利益 / 従業員が作業する時間

と定義出来ます。つまり

同じ時間作業させるなら、何をしてもらうのが最もコスパがいいか?

という発想です。ここで注意したいのは「コスパ」という概念。ボトルネックが従業員の時間であるとわかったならば、利益を最大化するためには

✕ 利益額or率の高い商品を売る
◎ 販売にかかる従業員の「時間あたり利益額」を最大化する

という視点で意思決定することが必要で、これは私たちの直感的な意思決定に反する場合があるので注意が必要です。具体的に例を出すならば…

「時間あたり利益」による意思決定例
【仮定】
①肉まん
1個あたりの利益:60円
販売にかかる時間:60秒
時間あたり利益1円/秒
②○✕チョコ
1個あたりの利益:20円
販売にかかる時間:10秒
時間あたり利益2円/秒
 
【結論】
1個あたりの利益①肉まんが3倍だが、時間あたり利益で見ると②○✕チョコが2倍効率が良い。
→②○✕チョコを優先的に販売すべき

ボトルネックが従業員の時間であるならば、上記の様に意思決定する必要があります。なぜならば

例:1人の従業員が10分間(600秒)商品を販売し続けた場合
①肉まんを販売
販売数量:10個 (=600秒/60秒)
得られる利益600円 (=10個×@60円 or 600秒×1円/秒)
②○✕チョコを販売
販売数量:60個 (=600秒/10秒)
得られる利益1200円 (=60個×@20円 or 600秒×2円/秒)
→10分間で600円の利益差が生まれる

となるからです。


私たちの直感では

多くの利益を生み出す商品をより多く売るのが大事!

と思っているので、気を抜くと「①肉まん」を売りたくなりますが、時間がボトルネックである場合にはその判断は間違いになります。


もちろん、時間がボトルネックでない場合には、より利益単価の高いものを積極的に販売すべきです。

いまどこがボトルネックになっているか?

によって、正しい経営判断ががらっと変わってしまいますので、ボトルネックを理解することは非常に重要です。
 

コンビニはおでんを販売すべきか

ここまでの話が理解できれば

・利益が出しにくい
・販売の手間がかかる

という二重苦を抱えたおでんの販売を取りやめることは、合理的な判断であると言えそうです。


おでんの販売を辞める代わりに

・「時間あたり利益」の高い商品を積極的に販売する
・商品の補充・陳列をスムーズに行う
・会計時のお客様の待ち時間を短縮する

など、他の重要な作業に従業員の時間を使うほうが利益に貢献すると考えられます。

人手不足が続くとコンビニからおでんが消えてしまう…!?

という日がいずれ来てしまうかもしれません。
 

コンビニの経営を改善するために

従業員の時間がボトルネックである現状において、コンビニの経営を更に改善するために考えられることは

【店舗オペレーション】
・商品(カテゴリー)ごとに時間あたり利益を明らかにする
・すべての作業の標準作業時間を計測する
・以上に基づいて作業の明確な優先順位を決める
 
【商品開発・マーケティング】
・販売にかかる時間あたり利益を最大化する商品を開発する
・時間あたり利益の高い商品が売れるようにマーケティングを展開する

といったことによって利益改善の取り組みが機能するはずです(指摘されなくても既にやっていることだと思いますが、ブログの流れとして「今後の展望」的に書かせていただきました)。
 

おわりに

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ニュース記事をベースに紐解いていくことによって
経営理論を理解していると論理的に適切な意思決定ができるよ!
ということをご紹介しました。今回使用したTOC制約理論について、理解を深めて行きたい方は以下の記事もご参照下さい。

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