ウワノキカクのキカクメモ│問題解決のための論理・ロジカルシンキング

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英語試験延期は何故起こったか?│文科省の歴史と内閣改造の課題

「萩生田文科相 英語試験の実施延期の方針を明らかに」というニュースが流れました。

以前からずっと批判が上がっていたのに、決定がおそすぎる!

受験まであと半年なのに、今更変えるなんて受験生がかわいそう!

という声があちこちから聞こえてきます。


そこで今回は

・なぜ英語試験の延期が今になって決まったのか?

を考察していきます。

英語試験の実施延期は何故起こったか?

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英語の民間試験導入の延期決定

本日11/1、萩生田大臣が大学入学共通テストに導入される英語の民間試験について、来年度からの実施を延期することを明らかにし

「英語4技能評価は、グローバル人材の育成のため重要であり、令和6年度実施の大学入試に向けて、文部科学大臣の下に新たに検討会議を設置し、今後1年を目途に結論を出す」

と発言しています。萩生田大臣の決定には賛否両論あるものの、試験本番まであと半年という差し迫ったタイミングでの変更がなぜ起こってしまったのでしょうか。
 

文部科学省の歴史と歴代文部科学大臣

結論から言えば

文部科学大臣は1年で変わるから、本質的な重要問題こそ先送りされる

という力学が働いていると考えられます。文部科学省がシステム上抱えている課題として、毎年大臣が変わるという事実上の制約があります。文部科学省のホームページには、以下のように歴代大臣が紹介されています。

歴代文部科学大臣
1 町村 信孝 平成13年 1月 6日〜平成13年 4月26日
2 遠山 敦子 平成13年 4月26日〜平成15年 9月22日
3 河村 建夫 平成15年 9月22日〜平成16年 9月27日
4 中山 成彬 平成16年 9月27日〜平成17年10月31日
5 小坂 憲次 平成17年10月31日〜平成18年 9月26日
6 伊吹 文明 平成18年 9月26日〜平成19年 9月26日
7 渡海紀三朗 平成19年 9月26日〜平成20年 8月 2日
8 鈴木 恒夫 平成20年 8月 2日〜平成20年 9月24日
9 塩谷  立 平成20年 9月24日〜平成21年 9月16日
10 川端 達夫 平成21年 9月16日〜平成22年 9月17日
11 髙木 義明 平成22年 9月17日〜平成23年 9月 2日
12 中川 正春 平成23年 9月 2日〜平成24年 1月13日
13 平野 博文 平成24年 1月13日〜平成24年10月 1日
14 田中眞紀子 平成24年10月 1日〜平成24年12月26日
15 下村 博文 平成24年12月26日〜平成27年10月 7日
16 馳 浩 平成27年10月 7日〜平成28年 8月 3日
17 松野 博一 平成28年 8月 3日〜平成29年 8月 3日
18 林 芳正 平成29年 8月 3日〜平成30年10月 2日
19 柴山 昌彦 平成30年10月 2日〜令和元年 9月11日
20 萩生田光一 令和元年 9月11日〜

2001年1月の文部省と科学技術省の統合から18年10ヶ月ですが、現萩生田大臣が20人目の大臣です。


ちなみにこれは最近のトレンドではありません。日本で初めての文部大臣は1885年(明治18年)に就任した森有禮ですが、2001年の文部省統合までの116年間で125人が文部大臣として名を連ねています。


つまり、1885年から2019年まで日本の教育行政は約135年の歴史を145人の大臣によってリードされているわけです。

内閣改造に伴う文科省の制約

もちろん、そもそも日本は内閣総理大臣の権力維持のために頻繁に任命権を行使して大臣を変えるということが起こるのですが、もちろん、すべての省庁が同様の扱いではありません。大臣の入れ替えは省庁の序列で概ね決まっています。


2012年より安倍内閣は長期政権となっていますが、第三次安倍内閣以降は毎年おおむね1年単位で内閣改造を繰り返しています。

第二次安倍内閣以降の内閣改造
◆第二次安倍内閣(2012.12-2014.9)【約1年9ヶ月】
▽改造内閣(2014.9-2014.12)【約3ヶ月】
留任6名-財務、外務、文科、国交、内閣官房、特命担当(経済財政政策)

◆第三次安倍内閣(2014.12-2015.10)【約10ヶ月】※全員再任
▽第一次改造内閣(2015.10-2016.8)【約10ヶ月】
留任9名-財務、総務、外務、厚労、防衛、内閣官房、特命担当(経済財政政策)、特命担当(地方創生)、国務

▽第二次改造内閣(2016.8-2017.8)【約1年】
留任8名-財務、総務、外務、厚労、国交、内閣官房、特命担当(経済財政政策)、特命担当(男女共同参画・少子化対策)

▽第三次改造内閣(2017.8-2017.11)【約3ヶ月】
留任5名-財務、経産、国交、内閣官房、復興

◆第4次安倍内閣(2017.11-2018.10)【約11ヶ月】※全員再任
▽第一次改造内閣(2018.10-2019.9)【約11ヶ月】
留任6名-財務、外務、経産、国交、内閣官房、特命担当(経済財政政策)

▽第二次改造内閣(2019.9-現在)
留任2名-財務内閣官房

「留任」に現れる省庁の顔ぶれはほぼ一定です。第二次安倍内閣以降においては、麻生財務大臣、菅官房長官の2名は留任し続けており、総務・外務・功労・防衛・国交あたりがときどき留任、その他は毎回入れ替えという形です。以下の画像を見比べると「留任」の扱いの違いがよく分かるかと思います。内閣改造のたびに文科省は大臣が変わっていることが明らかですね。
 
▽財務大臣
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▽官房長官
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▽文部科学大臣
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※いずれもWikipediaより引用


ちなみに、一度だけ文科大臣が留任していますが、これは東京五輪招致のタイミングで当時の下村大臣が留任しており、特例的な対応のように見えます。

文部科学大臣は毎年変わる!

「教育は国家百年の計」という言葉もありますが、現実的には1年単位の縛りプレイの中で百年の計画を立てなければならないという、厳しい条件の中で教育行政は動いているのです。

なぜ大臣は頻繁に変わるのか

これは日本の歴史の中で培われてきた政治的慣例で、現行のルールで議院内閣制をとる以上、やむを得ない面もあります。少し古い記事ですが、2014年9月の音喜多駿氏のブログによると

内閣改造が行われる理由

  1. 内閣総理大臣の求心力を高めるため
  2. 国民・メディアへの刷新アピールで支持率を回復するため
  3. 党内で大臣ポストを回していくため

引用:国務大臣の平均在任期間、わずか10か月…ぶっちゃけ「内閣改造」はなんのため?(音喜多駿ブログ)

詳しい解説はブログを読んで頂くとして、氏の文章中にでも以下のような表現があります。

内閣改造に国のため、国民のためという理由はほとんど含まれておりません。

日本の内閣改造の在り方に関する疑義は昔から言われていることですが、今回の民間英語試験の延期といった出来事に如実に現れた様に思います。

教育行政はどうあるべきか

この様に、文部科学大臣が毎年変わることが長期的な視座での本質的な議論と執政を妨げていると考えるならば、あるべき状態は

文部科学大臣をころころ変えない!

ということかもしれません。冒頭に紹介した通り萩生田大臣は

令和6年度実施の大学入試に向けて、文部科学大臣の下に新たに検討会議を設置し、今後1年を目途に結論を出す

と発言されているので、大臣直下の検討会議を実質的な実行集団に組織強化しながら、令和6年度の大学入試が恙無く行われるまで大臣を継続するというのは一つの視点ではないでしょうか。


もちろん、萩生田大臣自身の教育行政への適格性という議論もあろうかと思いますが、過去には文科省の大臣政務官も務められた方ですので、専門性やネットワークとしては悪くないのではないでしょうか。

重要な政策を担う大臣を簡単に変えるな!

は国民から訴えていける論点の1つだと思います。大臣本人も、穿った言い方で恐縮ですが、1年で逃げ切れないと思ったら重要な問題を早めに着手する真理が働くはず。

おわりに

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日本の政治・行政の在り方に不信感を抱き

日本の未来って暗いよね…

と感じる方も少なくないと思いますが、こうした慣例的なシステムによって抜本的な改革が阻まれているとすれば、これから意図的に変えていくことによって本質的な国政改革に繋がるはずです。


内閣改造で顔ぶれの変化に反応するのではなく、中長期的な視座で本質的な施策を展開できるような政治を作っていかねばならないと感じる一件でした。

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