ウワノキカクのキカクメモ│問題解決のための論理・ロジカルシンキング

問題解決のためのロジカルシンキングを学ぶためのブログです。

「原因に手を打つことが大切だ!」は本当か?②因果関係の分析が「ユルく」なってはいないか?

「症状ではなく、問題の原因に手を打て!」というメッセージを論理的思考を求めるビジネスの文脈ではよく耳にします。

しかし、「原因はどこまで遡ればいいの?」「なぜを5回繰り返したら、なんだか自分にはどうしようもない大きな問題にたどりついちゃったんだけど」「別にいまは症状が解決するだけでいいと思うんだよなあ」などなど、現実的には難しいシーンも多いわけで。とはいえ、対症療法ばかりになってもムダな時間を使うばかりなのは間違いない。

そこで、「一般的に使える指針としてはどう整理しておいたらいいだろうか?」というのが今回のお題です。

因果関係の分析が「ユルく」なってはいないか?

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前回のエントリーでは、問題解決と因果関係の関係性を明らかにするために、簡略化したモデルを使って考えてみました。


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モデルの前提条件
□ Aという問題(症状)を解消したい
□ Aの原因はBであり、Bの原因はCであるという因果関係がある

 
 
具体的な2つのケースを検討してわかったことは

・因果関係を遡ると「そりゃそうなんだけど、そこまでせんでもええやんか」という要素に突き当たることがある
・因果関係に時間的なギャップがあると「おいおい、今更そこに手を打っても、目の前の問題は何も解決しないぞ」となることがある

  
 
などなど、「問題解決に因果関係の分析を当てはめても、やっぱりうまくいかないんじゃないか…?」と思いたくなるような内容が見えてきました。

なぜこうなってしまうのかといいますと、これはひとえに「因果関係の捉え方がユルいから」です。言い換えれば、ケースの分析そのものが、「それって、いついかなるときも当てはまる因果関係ですか?」という、因果関係の厳密さ(≒再現性)に十分に応えきれていないということです。

この問題を、もう少し丁寧に見ていきましょう。


論理的に想定しうる様々な結果を考える

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具体的に考えるために

「おなかがすいたから、おにぎりを食べた。」

という事実があったとして、因果関係を分析してみましょう。

A(結果)おにぎりを食べた
B(原因)おなかがすいた

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さて、「この分析は『いついかなるときも』正しい分析でしょうか?」「この原因があるときは、『いつも』同じ結果が得られるでしょうか?」 これが、因果関係の厳密さを確認するための質問です。この質問の答えを丁寧に考えることで、より適切な因果関係の分析をすることができます。

この例で考えてみると、「確かに、『おなかがすいた』としても、おにぎりを食べないこともあるよな…」ということがわかります。

A(結果)おにぎりを食べた
A’(考えうる別の結果)ラーメンを食べた
A”(考えうる別の結果)がまんした
B(原因)おなかがすいた

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設定した原因に対して、様々な結果が論理的に想定しうるとき、その因果関係の分析は「ユルい」(厳密さを欠いている)と言えます。そして、分析がユルいので、当然の結果として、そこから導き出される解決策も妥当であるとは言えません。これが「原因に手を打つことが大切だ!」と言いながらうまくいかなくなることの正体です。
 
 
 
 

原因は1つじゃない!

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では、「おなかがすいたから、おにぎりを食べた。」において、どう分析するのが適切なのでしょうか?

ここで重要なのは「原因は1つではない」という考え方です。「私たちが見る『ある結果』は、常に『複数の事象の掛け算によって生まれている』」という前提をもって因果関係を分析しなければなりません

「おなかがすいたから、おにぎりを食べた。」というシーンを具体的に考えてみましょう。ある人がいて、その人が空腹になっておにぎりを食べている。まず、前提として、おにぎりを食べているということは「おにぎりを持っている」という事象があるはずです。当然ですが、おにぎりが手元になければ、おにぎりを食べることはできません。

また、「おなかがすいて、おにぎりをもっていた」ならば、いつでも「おにぎりを食べる」という行動を取るでしょうか? たとえば、重要な会議の最中であるなど「いまはおにぎりを食べるのは流石に無理かな…」というシーンであれば、いくらカバンにおにぎりが入っていたとしても、食べることはしないでしょう。「食事が許される環境にある」という条件が必要です。

整理すると、以下のような構造になっていることがわかります。

A(結果)おにぎりを食べた
B(原因1)おなかがすいた 
B'(原因2)おにぎりを持っている
B”(原因3)食事が許される環境にある

 
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こういう状態であれば、因果関係の確度はもともとの分析に比べてかなり高まっています。もちろん、これらの原因がそろっていたとしても結果が起きないことも考えられます。因果関係の分析を更に強固なものにしていくことは、無限に可能です。

大切なのは、分析の精度を80点、90点、95点、97点…と高めていくことではなく、「ざっくりこう分析したら、大きく外してはいないだろうな」と思えるレベルの論理を、シンプルな要素で示すことです。

要素は1つではだめですが、5つ以上になっても複雑過ぎます。3を中心に、±1くらいの範囲で要素を整理するといいのではないかと思います。
 
 
 
 

原因が上手に分析できれば、解決策は選べる

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因果関係の分析が出来たならば、次は解決策の立案です。

おにぎりの例で続けて考えていきます。「おにぎりを食べた」という結果には、同時に揃っている必要のある原因が3つありました。ということは、この3つのうちのどれか一つでも消すことができれば、結果が起きることを防ぐことができるはずです。つまり、解決策の方向性は3つあるわけです。戦略的自由度は3です。

以下、1つずつ見ていきましょう。

方向性1 「B(原因1)おなかがすいた」を消す

 
「おなかがすいた」という原因が起きないようにする、つまり、「お腹がすかないようにする」という解決策があります。

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具体的な実行方法としては、こまめにお菓子やナッツをつまむようにする、前の食事を遅めに・多めにとっておくなど。

方向性2 「B'(原因2)おにぎりを持っている」を消す

 
「おにぎりなんて持ってるからだめなんだ!」ということですね。「おにぎりを持たせない」という解決策があります。

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具体的な実行方法は、家を出るときの持ち物をチェックする、おにぎりの持ち込みを禁止するなど。

方向性3 「B”(原因3)食事が許される環境にある」を消す

 
「そもそも食べてもいい環境だから、食べる」。環境やルールを変える、「食事を禁止する」という解決策がありますね。

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具体的な実行方法は、時間や場所を区切って食事を禁止したり、禁止しなくとも「いま食べるのは…」というムードをつくってしまうなど、いろいろ考えられますね。


因果関係を分析し、原因を複数の事象の掛け算であると捉えることで、解決策の選択肢は自然と複数持てることになります。そして、あとはそれらの方向性の中から実行可能なもの、実行したいと思えるものを選んでいく。これが、問題解決の基本的なプロセスです。いい分析ができれば、いい解決策を導くことができるのは、このためです。だからこそ、問題解決に当たる人は、分析に半分の時間をかけるわけですな。
 
 
 
 

現実の問題を解決するには?

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いかがでしょうか? 「原因に手を打つ」という問題解決の考え方について、重要な基礎がわかり始めてきた。そんなところではないでしょうか。

次のエントリーでは、前のエントリーで扱った「早起き」「50万円」のケースを分析し直しながら、具体的な実践方法について更に踏み込んで解説していきます。
 
 
 
 

【次の記事】③ある出来事は、複数の条件の掛け算で起きている【完】

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「因果関係の思考」を学ぶには? 推薦図書一覧

この一連の記事では、「原因と結果の論理」を扱っています。


この考え方は、『ザ・ゴール』の著者でありTOC(制約理論)の生みの親であるE・ゴールドラット博士により「思考プロセス」という名称で体系化されました。


日本ではまだ体系的に学べる書籍は少なく、関連書籍が数冊が出ている程度ですので、おすすめなものを以下にてご紹介します。
 
 

「因果関係の思考って、そもそもなあに?」

『ザ・ゴール2』エリヤフ・ゴールドラット 著
『ザ・ゴール2 コミック版』エリヤフ・ゴールドラット 著 岸良裕司 監修

「具体的な使い方を基礎から学びたい!」

『考える力をつける3つの道具』岸良裕司 著
『世界で800万人が実践! 考える力の育て方――ものごとを論理的にとらえ、目標達成できる子になる』飛田基 著

「これはぜひともうちの子どもにも学ばせたい!」

『子どもの考える力をつける 3つの秘密道具 お悩み解決! ! にゃんと探偵団』岸良裕司 著

「因果関係の思考のプロ」として理論と実践方法を突き詰める

『頭のいい人の思考プロセス―すぐに使える、図と論理の問題解決スキル』リサ・J. シェインコフ 著
『ゴールドラット博士の論理思考プロセス―TOCで最強の会社を創り出せ!』H.ウイリアム デトマー 著