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ちきりん氏「思考時代」に求められるのは価値体系を創り上げる「思想」の力

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「思考時代」に求められるのは価値体系を創り上げる「思想」の力

「思考時代」へ

2019年12月には、尊敬する二人の巨人がそれぞれの視点から未来を予測する記事を発表しました。


一人目は言わずと知れたちきりん氏。彼女は、現在を「オフィス時代」と名付けた上で、その時代が終わりこれからは思考時代へと転換すると述べました。

詳しい内容は読んでいただくとして、オフィス時代から思考時代への転換点の大きなポイントをまとめると…

オフィス時代の特徴
<時代の特徴>
会社や上司から「言われたこと=指示されたことを(できるだけ正確に、かつ素早く)やる」
 
<求められる能力>
・営業力(コミュ力)
・分析力
 
<能力の獲得方法> 
・大学に4年間通う

こうした時代が終焉を迎えます。なぜならば、ITやAIの進化によってホワイトカラー業務をコンピューターが行えるようになったから。その先に待っているのが「思考時代」。

思考時代の特徴
<時代の特徴>
「なにをやるべきか」
=「何をやれば価値があるのか?」「市場は何を求めているのか?」自体を自分で考える

 
<求められる能力>
①研究レベルの探究心を注ぎ込める専門性(博士号が最低限)を持てる
②時代の波を見極めて、新しい価値を人に先駆けて認知していける
 
<能力の獲得方法>
①大学院で博士号を取る(狭い分野をとことん掘れる人)
②マーケット感覚を鍛える(「広く浅く」が向いている人)

こうした時代へとどんどんと変化していくだろうとのこと。こうした説明は直感的にわかりやすく、非常に納得感が高いと感じました。
 

思考時代の「前提」は何だろう?

ストーリーとして非常に納得感が高いこのお話ですが、より抽象度の高い視点から俯瞰したとき、なぜこうした変化が起きると説明出来るでしょうか。


まず、大きな前提として資本主義はまだまだ続くという見通しがあります。確かに、テクノロジーの発展により、一部、脱資本主義的な取り組み・思考実験が様々な形で展開しているのは事実です。しかし、少なくとも向こう10~20年という単位で資本主義自体が終わりを迎えることはなさそうです(第三次世界大戦が起こらなければ)。


ここで言う資本主義とは、個人・法人が資産を所有し、経済活動によってその価値を高め続けることで豊かになるパラダイム、くらいのイメージです。つまり、資本主義が続く限り、どれだけコンピューターが進化しても、「もっと豊かになりたい」という気持ちが消滅しない限りは、人間は何らかの形で資産の価値を高めるための仕事(労働)に取り組むだろうと考えています。残念ながら、まだ人間は働くことから完全に自由にはなれないでしょう(清心的・肉体的なストレスは大きく軽減していくはずですが)。

資本主義はまだまだ続く!

というのが、思考時代の大前提です。
 

「何をやるべきかを自分で考える」より上位の仕事

資本主義がまだしばらくは続くとした上で、思考時代へと転換するダイナミズムを引き起こす本質的な理由は何でしょうか。


ちきりん氏の時代の整理に振り返ると、重要なことに気づきます。オフィス時代の特徴には

会社や上司から「言われたこと=指示されたことを(できるだけ正確に、かつ素早く)やる」

とあり、当然のことですが

・会社や上司:指示を出す人
・その他大勢:指示通りにやる人

という役割分担の前提があります。


そして、進化したコンピューターがその他大勢の「指示通りにやる人」を置き換えます。そうなった思考時代は

「なにをやるべきか」
=「何をやれば価値があるのか?」「市場は何を求めているのか?」自体を自分で考える

と説明されていましたが、これは何も全く新しいことではなくて、オフィス時代の「指示を出す人」の役割をそっくりそのままやっているのと同じことではないでしょうか。単純に、コンピューターができる領域が拡大するに従って、人間の役割がより上位に押し上げられているようなイメージです。そう考えると

オフィス時代で会社や上司として指示を出していた人はどこにいくの?

が気になってきます。「そういう人は労働をしなくなるんじゃないの?」と思うかもしれませんが、資本主義が続き、人間により豊かになりたい欲求がある限りは、そうした人たちも何らかの形で経済活動に従事するはずです。


その他大勢の人が担う役割である「何をやるべきかを自分で考える」ということを、企業活動の一般的な機能に落とし込むならば

・経営企画
・商品開発
・セールス、マーケティング

の実際に手足を動かさない部分すべてだと思ってよいでしょう。そうしたことが世の中の人の一般的な仕事になったとき、より上位の人の仕事は何になるでしょうか?

キーワード「思想」

ここで2人目の巨人、GO三浦崇宏氏の登場です。「2020年広告業界大予測」と銘打って2020年以降の広告業界のトレンドを語った記事があります。

こちらもぜひ詳しく読んで頂きたいのですが、記事の後半の「2020年、3つのポイント」に「クリエイティブのトレンドは「思想」へ」という項目があり、そこでは以下のように語られています。

「ジャンル」から「方向性」そして「思想」へ。これが今後のクリエイターの在り方の大きな流れとなる。そしてこの「思想」や、社会に対して提案性の高いクリエイティビティは、成熟社会において機能や価格で差別化できなくなっている企業のマーケティングにとって明らかに必要なものだ。
テクノロジーが商品の均質化を徹底した結果、マーケティングの歴史において「思想」が最も有力な差別化要因になるといういびつな奇跡の時代が訪れている。

ここではクリエイターの在り方としての「思想」、最も有力な差別化要因としての「思想」が語られているが、本質的には

「思想」によって価値の所在を定義する

ということがビジネスの核心になると考えられる。つまり

上位の人:「思想」=「何が価値を生み出すかを決める世界観」を提示する
その他大勢:「なにをやるべきか」=「何をやれば価値があるのか?」「市場は何を求めているのか?」自体を自分で考える

という対比構造を想定できます。強引に言えば「思想する人」が「思考する人」を支配する構造。これが、私が考えるちきりん氏が主張する思考時代の社会のイメージです。
 

思考時代の「本質」は何だろう?

ここまでを俯瞰して、今一度思考時代の「本質」部分を考えてみましょう。


思考時代は、一部の思想する人が多数の思考する人を従えることで経済活動を成立させる時代だと考えられます。現在にこの萌芽を見るならば、YouTubeなどの動画配信サービスとSNSを組み合わせたオンラインサロンが具体例にふさわしいところ。もちろん、現在のオンラインサロンは、GO三浦氏の指摘する「思想」というよりは「ジャンル」や「方向性」の粋にとどまるものが殆どですが、向こう10年でビジネスモデルが進化すれば「思想が思考を支配するコミュニティ」になっていく可能性は十分にありそうです。


そしてその時には、複数のオンラインサロンに所属することが当たり前になっているはず。現代ではまだまだ1つの企業に所属することが一般的ですが、これから経済活動の母体はサロン的な連帯の共同体が中心になり、かつ複数のサロンにまたがって思想や知見を交流し合う姿が一般的になっているのではないでしょうか。


このようにテクノロジーが進化し続けてなお、思想する人間が中心のコミュニティが暮らしの核にあり続けると予想するのは

人間の価値体系を作るのは人間である

というのが本質的な理由だと考えます。宗教であれ哲学であれ、数千年続く価値の体系を創り上げたのは人間であり、その役割においては思考時代にあってもコンピューターの出る幕はないと思います。


逆説的に言えば、思考時代が終わりを迎えるとしたら、AIが人間の価値体系を独自に創り上げることが出来るまでに進化したときでしょうか。その時、人間の役割が何になっているかを妄想するのはとても刺激的なテーマですね。
 

推薦図書

冒頭に紹介したちきりん氏の記事にもありましたが、「思考時代」に必要な考え方を身につけるためには『マーケット感覚を身につけよう』がおすすめです。と、いいながら自分も久しく読んでいないのでこれを機に読み返してみようと思いました。

また、2020年1月にはGO三浦氏の『言語化力』がリリースされます。「思想」は映像でも音声でもなく、言語によって作られます。新たな価値の体系を生み出す言語の力を高めたい方はぜひこちらを手にとってみましょう。

おわりに

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尊敬する2大巨人、ちきりん氏とGO三浦氏の記事を引用しながら、次の時代のイメージを考察しました。


多くの人が自分の頭で考える思考力を要求される時代に向けて、このブログでは思考力を徹底的に突き詰めるための「思考の教科書」を書いておりますので、興味のある方はぜひ以下のリンクもご参照下さい。

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