「論理的思考が必要だ!」というメッセージはよく耳にしますが、「なぜ必要なのか?」は意外と曖昧にされていたりします。特に、論理的思考に対して苦手意識があればあるほど、「そこのところをはっきりしてよ!」と思うもの。
そこで今回は「なぜ論理的思考が必要だと言えるのか?」更に踏み込んで「論理的思考が不要な人だっているのではないか?」ということを積極的に考えてみました。
論理的思考が不要な人だっているのではないか?
人間が生きる上で最低限必要なもの
考えを進めるにあたって、まずは「人間が生きる上で最低限必要なもの」を整理するところからスタートしましょう。
現代の社会を前提とするならば、何をおいてもお金が必要です。いくら必要かはさておき、現在、そして将来に渡って暮らし続けられる最低限のお金が要ります。従って、生活に必要なお金を論理的思考が全く関与しない形で集められるのであれば、その人にはそうした資質は不要です。
また、健全に生きていこうと思えば人間関係も極めて重要な要素です。人との関わりでストレスを感じてしまえば、それ自体が健康を害する原因になってしまう。人間関係で苦労しないための選択肢は大きく2つ。「一切ストレスの無い人間関係を構築する」か「人間関係を完全に遮断する」かが考えられます。いずれも現実的には難しいことのように思えますが、もし針の穴を通すように条件が合致する生き方があり、そこに論理的思考が関わらないといえるならば、その人には論理的思考が不要だと言えそうです。
お金と人間関係。この2つの条件をうまくクリアできれば健やかに生きていける。その前提で考えを進めてみます。
論理的思考が不要な人~お金篇~
まず、お金です。論理的思考は「先々の計画を立てる」「人とコミュニケーションをとる」に関わる要素なので…
✓ 経営者・フリーランス:中長期の計画が必要
✓ 会社員:そもそも組織がある前提の稼ぎ方。コミュニケーションが必須になる
このあたりは軒並み厳しそう。ここで日本人の9割以上が除外されてしまいそうです。
会社員と言っても、例外的に「フルコミッションの会社員」などはありそうです。一部の保険や不動産の営業さんなんかがそうですね。でも、得てして売るのが難しい商売だからこそフルコミッションが成り立つわけですから、そこに論理的思考が不要だというのは難しいでしょう。
そうなると残った領域でどんな稼ぎ方があるかというと、スポーツ選手なんかは有力そうです。ただし、プロとして十分に稼げる余地のあるスポーツに限定されるので、プロとしての年俸が十分に高いメジャーリーグスポーツか、大会が豊富で賞金の大きなスポーツということで…
◎ 野球・サッカー・ゴルフ
△ その他メジャーリーグのあるスポーツ(バスケット・バレーなど)
✕ マイナーリーグのみ、その他のスポーツ
こんな整理ではないかと思います。こう見ると、11人の連携が90分間常に求められるサッカーはコミュニケーションがかなり重要そうですが、個々のプレーがある程度独立している野球はギリギリ可能性があるかもしれません。完全な個人スポーツのゴルフはドンピシャです。
個人の偏見かもしれませんが、長嶋茂雄元巨人軍監督なんかは好例です。どこまで本当かわかりませんが、「ジャイアンツの監督は大変ですよ、毎日がジャイアンツ戦ですから」「代打、バント土井(相手は当然のことながら前進守備。しかし、露骨なので相手が迷う事も)」といった数々の迷言を残した名選手・名監督は論理的思考がなくても(失礼!)大役を果たされています。
いずれにせよ「頭を使わず身体で稼ぐ!」という方向性はありそうですが、プロスポーツ選手の大半が努力家であること、「どのような努力をすべきか?」を緻密に検証した上で実行されていること、また、プロスポーツで稼げるのは人生の限られた期間であることを考えると、多くのプロには論理的な思考力がやはり必要です。「論理的思考なんていらない」と言い切れるのは、ごくごく一部の天才プレイヤーだけでしょう。
論理的思考が不要な人~人間関係篇~
続いて人間関係です。「自分の言いたいことをわかりやすく伝える」ということには論理的思考力が必要ですので、伝えるということを完全に手放すか、「何を言っているかよくわからないけれど、含蓄がありそうだから聞こうと思ってもらえる」「何を言っているかよくわからないけれど、『要は~しておいたらいいんだろう』ということを理解してまわりがやってくれる」という状況が作れれば良さそうです。お金さえあれば、インターネットを使えば必要なものは手に入る時代。家がお金持ちパターンなら、伝える力はなくてもやっていけそうです。
繰り返しの登場になりますが、長嶋元監督レベルになれば「何を言っているかよくわからないけれど、含蓄がありそうだから聞こうと思ってもらえる」は実現できていそうで、「スーッと来た球をガーンと打つ」という打撃理論に数学者の秋山仁氏が数学的な解釈を加えるなど、多くの人が耳を傾けています。
「何を言っているかよくわからないけれど、『要は~しておいたらいいんだろう』ということを理解してまわりがやってくれる」というのは、親が子にするような配慮です。お金持ちに生まれたら、このあたりは満たされそうですね…。意識的に目指せるのは、耳を傾けてもらえるだけの徳を積んだ偉人になることでしょうか。
論理的思考が不要な人まとめ
ここまでの考察をまとめると、「論理的思考が不要な人」というのを論理的に考えると…
✓ 天才プロ野球・プロゴルフ選手として成功する!
✓ 超お金持ちの家に生まれる!
という生き方ができる人でしょうか。論理的思考を使わずにお金をなんとかでき、人間関係でも困らない。そんな生き方が出来る人には論理的思考は一切不要です。が、果たしてそんな人は日本に何人いるでしょうか。
✓ 生きるには「お金」「人間関係」が整っていることが必要
✓ 「天才プロ野球選手」「天才プロゴルファー」「超お金持ちの家に生まれる」になれれば論理的思考は不要
✓ 長嶋茂雄元監督を目指そう!
✓ 「超お金持ちの家に生まれる」はやっぱりチート
論理的思考が必要な人はどんな人?
「論理的思考が必要な人」の条件
では、翻って「論理的思考が必要な人」はどんな人でしょうか。結論から言えば、上記以外のすべての人には論理的思考が大なり小なり必要です。論点を整理すると、以下のような形になります。
①「人と円滑にコミュニケーションを取る必要がある人」には論理的思考が必要
伝える・理解するというコミュニケーションにおいては、伝えあう主張が明確であることに加えて、「その主張がなぜ妥当なのか」をはっきりと合意することが必要です。人は、話の内容ではなく理由に納得します。互いに納得して主体的に生きていくためには、論理的思考によって理由を説明する力が必要になります。
②「先を見据えて計画的に判断する必要がある人」には論理的思考が必要
計画を立てて実行するというのは、「いまの欲求を我慢する」ということです。「痩せたいからいまは甘いものを我慢する」「このままではジリ貧だから、苦しいけれど我慢して損切りする」というように、「計画=我慢」です。我慢するには明確な理由が要ります。その理由をつくるのが論理的思考です。「常に欲求のままに生きていて良い」という人以外は、未来の自分のために論理的に判断することが必要になります。
✓ 「コミュニケーション」「計画」に論理的思考は必要である
✓ 従って「コミュニケーション」「計画」が必要な人には、論理的思考が必要である
おわりに
「自分はコミュニケーションと計画からは逃れられない」と思った方、「自分は長嶋茂雄にはなれない」と諦めた方は、ぜひ以下の記事から論理的思考をトレーニングしていきましょう。
思考の教科書【全体解説】
長嶋茂雄を目指す人にはこちらの本がおすすめです。笑
<総論>
◆【第1講】「考える」の実践的定義を学ぶ
◆【第2講】論理的思考の本質を理解する
◆【第3講】論理を使って「理由」を深堀りする方法
◆【第4講】論理的思考の完全講義【図解】
<各論>
◆構造化の思考「ロジックツリー」実践上のポイント
◆因果関係の思考とは何か
◆因果関係の思考「ブランチ」実践上のポイント
<まとめ>
◆論理的思考の基礎講座│ロジカルシンキングの苦手意識克服プログラムまとめ
◆思考の教科書【全体解説】
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